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2013/02/17

オレイン酸の話 再び

2月12日付の「食肉通信」に大きくオレイン酸の事が取り上げられていました。

牛肉の脂肪の質評価について  
 オレイン酸の特性 香り、口溶けなどに直結

サシ偏重主義から〝本当においしい牛肉〟へ――― ということで、昨年行われた「全国和牛能力共進会」肉牛の部の審査基準で「脂肪の質」の評価基準が本格的に導入された。

全国的に見てもオレイン酸含有量を差別化に打ち出すブランドも。

こうした中、種牛造成や肥育牛の育成についてどのような変化が起きているのか。

という風な前置きで色々と書いてあるのですが、例によって要点のみを。

★サシ偏重からの脱却が言われて久しい。
 脂肪交雑に代わる新たな評価基準としてオレイン酸に注目が

◎牛肉の美味しさは、大別すると

 味覚
 臭覚
 触覚(柔らかさなど)
 聴覚(キメ、締り、咀嚼音)
 視覚(脂肪交雑)

◎和牛肉の脂が輸入牛肉と比較してうまみが強いと言われる理由は

 オレイン酸含有量が多い
 脂の融点が低く、口の中で脂がとけるため

◎オレイン酸の多寡は

 香りと口溶け
 うまみ(脂の甘さ)

に、深く結びついていると言われている

☆オレイン酸とは?

・飽和脂肪酸・・・バターやココナッツ油に多く含まれる
・多価不飽和脂肪酸・・・魚の脂質(DHAなど)に含まれる
・一価不飽和脂肪酸・・・オリーブ油やアボカドなどに多く含まれる

オレイン酸は一価不飽和脂肪酸(MUFA)の一つ

・善玉コレステロールを減らすことなく、悪玉コレステロールを減らす
 (動脈硬化、高血圧、心臓疾患を抑制する作用があると言われる)
・多価不飽和脂肪酸に比べ、酸化しにくい

★牛肉においてオレイン酸が注目を集める背景

☆消費者が好む脂肪交雑と共励会入賞牛クラスの牛の脂肪交雑との乖離

◎BMS No.3、5、7、9、12の5種を視覚のみの評価で比較した結果、
 消費者の好みは・・・(財団法人 日本食肉消費総合センター調べ)

 BMS No.9・・・29%
 BMS No.7・・・18%
 BMS No.5・・・17.7%
 BMS No.3・・・12.9%
 BMS No.12・・・12.8%

4~5等級を評価する声はあるが、共励会入賞牛クラスの脂肪交雑を消費者の多くが支持しているわけではなく、ニーズは多様化している

☆全国和牛登録協会の育種価導入の成果

◎和牛の遺伝的能力を解析し、種雄牛、繁殖牛を選抜・淘汰して優秀な産子を造成する「育種価評価」導入により枝肉の質が飛躍的に向上

・ロース芯が大きい
・バラが厚い
・脂肪交雑が良く入るようになった

「脂肪交雑の技術については、ある種行きつくところまでいった感」
 (全国和牛登録協会 勝田智博情報解析課 課長補佐 談)

☆脂肪交雑とうまみの強さは32~33%程度でピークに達するという調査報告も

☆BMSナンバーが高くなりすぎると脂っこさも比例してますため、風味を損ねるという評価結果も 

★第10回全共で肉牛の部の審査基準へオレイン酸の多寡を導入

☆肉牛の部の全区で、肉質順位は「肉質得点順位」対「脂肪の質順位」を4対1で重み付けした順位で決定
(脂肪の質の評価は光学測定装置によるMUFA含有率の予測値で決定)

☆ただし、脂肪の質が評価に占める割合は全審査基準の10%の位置付け

☆従来の価値観を覆すものではなく、あくまで審査項目の一つという位置付け

(本格的に導入されたとはいえ、まだまだ手さぐり状態)

★生産現場での取り組み他

☆脂肪交雑の評価基準BMSナンバーとMUFAは殆ど相関関係が無い

・5等級だからといって必ずしもオレイン酸が高いわけではない
・現在の「価値=相場」の基準と等しく連動していない

◎生産農家は「脂肪交雑も維持しながらオレイン酸も多い肉」を作るべく取り組んでいる

・生米ぬかなどの糖度の高い飼料を用いるなど

☆肥育月齢とMUFAの相関関係は密接に結びついている

業界で一般的に認知されている「長期肥育された牛は味に深みがある」という説は科学的にも一定の根拠があることがわかった

☆全国和牛登録協会でも、長期肥育した牛に匹敵する味わいを持つ育種価にも取り組んでいる

★まとめ

☆高齢化、健康志向の中、食肉消費を促進していくため「オレイン酸」の持つ栄養特性を上手く打ち出し、販促につなげていく → 牛肉のイメージアップ

☆前出 勝田課長補佐の言葉として

・オレイン酸含有量が多ければ多いほどおいしいというわけではない
・サシが入れば価値が上がるという基準になっている
・実際に食べておいしいかは、あとまわしになってきた印象
・本当の意味で 食べておいしい牛肉 を作っていかなければならない

・審査基準の中で脂肪の質評価の比重は、さらなる検討が必要
・枝肉の価値観との連動性にも注目していかねばならない

以上

このブログをずっと読んで下さってる方には、特に目新しい内容の記事ではないかもしれません。
けれど、これが「畜産の業界誌」ではなく「流通・小売の業界紙」に書かれたことは、個人的には凄く嬉しいことでした。

競り市では、どうしても等級の高い物が高値になります。

もちろん買参人さん達は、全体的な枝の良し悪し、脂の質、サシの細かさなどを吟味して値段を決めているわけですが、例えば枝肉の共励会で5等級BMS12の枝があれば、5等級BMS10の枝の方が多数の買参人さんの好みの肉質・脂質の物であっても、BMS12の枝の方が最優秀賞(チャンピオン牛)になり最高値が付きます。

サシが多く入っている方に高値がつけば、どうしても生産者は「よりサシを入れること」を目指して行くのです。
この事が「サシ偏重」「サシ過剰」に繋がってきたわけです。

「美味しさ」の指標の一つであると言われるオレイン酸含有量が、格付け以外での「値付けの目安」になれば、また、生産者が目指す肉作りの姿勢も変わってくるのかもしれません。
(もちろん「おいしさ」を決めるのがオレイン酸の数値だけでは無いのは確かです。)

また、生産者が「サシにこだわらない、より美味しい肉」を目指しても、それを購入してくれる買参人さん、業者さん、肉屋さんや飲食店の協力と理解が必要不可欠です。
ぶっちゃけて言えば「この肉なら美味しいに違いない!」と買参人さんが認めてくれた4等級の枝肉を、5等級BMS12の枝肉より高く買ってくれる事だと思うのです。

このあたりは、ものすごく難しいことなんだろうなぁ・・・とは思うのですけど。

ま、とにかく、一つの切り口である「オレイン酸」に関して、流通・小売の業界紙が大きく取り扱ってくれたことには、大いに感謝する次第です、はい。

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オレイン酸が多すぎても美味しくない、というのは業界の間でも何度か目にし、耳にもしました。
んじゃ、どれ位の数値なら良いのでしょうね????
せっかく「指標のひとつ」にするなら、そこの所も突き詰めて欲しいなぁと思うのでありました。

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枝肉の話」カテゴリの記事

コメント

セッターはいっぱいいるのですけど、アタッカーがいないんですよね。
今までの攻撃では読まれているので、新たにオレイン酸というボールを、きれいにトスを上げてくれているのですけど、最後に、じゃぁ、誰が打つ?、どうやって?、どうぞどうぞ!、みたいな。最後の得点につながる所を、結局模索している最中てとこでしょうか。なので、未だ現在は、これまでのサシ攻撃と、時にはフェイントで頑張っていますね。強敵ライバルが占拠しないうちに、相手である消費者さんに届く、しっかりしたアタックを打ってほしいですね。
(私は何らバレーボールとは関係ありません。)

いい記事ですね~。いろいろと変わりつつはあるのでしょうが、まだまだ壁は厚いでしょうね。 でも 、5等級は思ったように値段がついてません。逆に3等級は安定しているようです。実際にこの相場を見るとそんな日がくるのも近いのかな? それから 、和牛よりもF1 ホルスのほうがオレインサンに関しては高いようです。 いろんな方の意見が見れて参考になります。

kawabataさん

ごめんなさい、バレーボール自体がよく分からんのです、わたし。
この場合のセッターとアタッカーって誰?
できたらサッカーか野球で例えて頂けると(笑)

牛肉自由化の際に「サシ」で勝負することで生き残ってきた和牛界ですが、今後アメリカ産牛肉などがドーンと入ってきた時に、太刀打ちできる武器があるとすれば、それは既に「サシ」ではないと思います。
大事なのは「おいしさ」と「安全」だと思ってるんですが。

仮に全ての和牛の美味しさの指標にオレイン酸を取り上げるにも、オレイン酸の数値を「誰が、どこで測るのか?」「その費用は誰が負担するのか?」
問題はまだまだ色々ありますね。

うづきさん

お久しぶりです。

現在3等級が比較的高値で推移してるのは、3等級の肉が足りないからです。これが「3等級の方が美味しいと消費者が認知しているから」という理由で高くなってるのなら、面白いんですけどねぇ。

しかし、仮に3等級や4等級の肉が5等級より高値で取引されるようになれば格付けの持つ本当の意味が無くなってしまいます。

残念ながら今の格付け基準が変わらない限り、相場の変化は起こらないと思います。

尤も、肉屋さん、卸屋さんの中には「この生産者の肉なら」と、高値で購入してくれている例は多いです。

>和牛よりもF1 ホルスのほうがオレインサンに関しては高いようです。

新しい研究結果でもでたのでしょうか?
ネットや本で色々調べてみましたが、ホルスのオレイン酸数値が黒毛より高かったのは
http://www.nbafa.or.jp/pdf/syokumi.pdf
の調査結果だけでした。(僅差で、しかもサンプル数は恐らく各1頭)

何か新しい研究結果があるのでしたら、文献、サイト等教えて頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いします。

12・16アメリカのための不正選挙
リチャード・コシミズ 【検索】
TPPリンチで日本の農業を破壊しようとしてます
311人工地震

なんだか、ごめんなさい。大分説明不足だったようで…前回のオレインサンの件は私達組合の牛の検査結果です。何回検査しても、今のところそういう結果です。餌の影響でしょうかね~?

うづきさん

組合単独でオレイン酸数値測定をしてるんですね、すごい!!
その数値が気になるところです(笑)

黒毛和牛のオレイン酸数値の平均ですが、測定する場所(筋間脂肪、ロース芯など)でも差異が出るようですね。

鳥取県での黒毛のオレイン酸数含有量は1534検体で平均は去勢53.1、雌54.9だそうです。
宮崎県での平均がどの位かも気になりますが、調べてるのかなぁ・・・

全共で優秀な成績の物は60位でした。
24カ月齢でこれだけの数値が出ているのですから、オレイン酸数値だけに拘るのなら、
肥育期間云々より餌の影響が大きいのでしょう。

この記事へのコメントは終了しました。

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