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2012/09/08

まさか未だに口蹄疫の原因は水牛なんて思ってる人いないよね?

口蹄疫の最中、色んなデマが飛び交いました。

なかでも、6例目の水牛農家に関しては

「自殺した」

「韓国からの研修生を受け入れた」

「安愚楽牧場の経営する水牛農家が・・・」

などなど。

ご丁寧に、そのデマをツイッターや掲示板、ブログなどで発信する人が多数いて・・・。
(デマ情報が拡散していくさまを見ていて、ネットって本当に怖いと思いました。)

水牛農家さんだけでなく、最初に口蹄疫疑いを届け出た1例目の農家さんに関しても、いわれのない誹謗中傷があったと聞きます。

本当は、一番先に伝染病を届け出た人は賞賛されるべきなんですよね。
届け出た人のお陰で素早く対処できるのですから。

それなのに届け出た人達が、ある場所では糾弾されたり非難されたり・・・。
おまけにネット上でも、有ること無いこと書かれて。

1例目の農家さんがテレビのインタビューで語っていました。

「こればかりは1例目になった人間でなくては、わからない」

優秀な繁殖農家さんであったのに、経営再開を断念されました。

牛を失った悲しみだけでなく、もっともっと辛い思いをされたのだと思います。

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口蹄疫終息後、国や県の検証委員会が調べるにつれ、色々な事実が明らかにされていきました。

しかし、未だに「口蹄疫ウイルスがどこから入ったのか」は明らかになっていません。

疫学調査を基にした国の発表では「6例目の水牛農家が実際の初発」とされています。

ただ、宮崎の調査では7例目(安愚楽牧場)が初発の可能性もあると言及しています。

さらに、口蹄疫発生以前の2月15日に、高鍋町で口蹄疫疑いとして県に通報された不明疾病の牛がいたこともわかってきました。
http://www.miyazaki-ombuds2.org/files/kaho/2010_02_15.pdf

この時に採取したはずの検査材料の保存がなされていたのかどうか、今のところ開示されていません。

この当該農家の横に安愚楽牧場の農場があり、そこからウイルスが伝播したのではないかと考える人もいるようです。
(だとしたら安愚楽牧場では2月くらいからおかしな牛がいたという話とも符合します。)

また、終息後に開かれたシンポジウムなどでも豚の獣医師さんが「水牛がウイルスを持ち込んだ」という旨を多くの畜産農家の前で発表するなどしていたようで、ますます真実が遠ざかってしまった状況もあったようです。」
実際には今回の口蹄疫の水牛はヨーロッパ種のイタリア水牛で、口蹄疫清浄国のオーストラリアで生産され、きちんと検疫を受けて輸入されたものです。)

「みやざきオンブズマン」が国や県に対して情報の開示を求めています。

その中の、水牛農家に対する「口蹄疫症状の聞き取りについて」の項目には

畜舎立入者の欄に

・その他、一般人が多数出入りしていて、全く把握できていない。

と、書かれています。

これが事実と反していると水牛農家さん自身は早くから訴え続けて来ていたのですが、開示情報として衆目に触れたのは、ごく最近です。

こういった事も、実際に「いつ、どこからウイルスが侵入したのか」を分かりにくくしている一因になっているようです。

「今更・・・」と、思っている人も少なくないとは思うのです。

でも、原因がはっきりしないと安心できない人間もいるんです。

国の「疫学調査」ってなんだったの?

私も納得できない人間の一人です。
ですから、この問題に関しては、しつこく取り上げていきたいと思ってます。

少なくとも「終わった事」には、したくありませんし、してはいけないと思っています。

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実際の初発は水牛ではない、水牛が口蹄疫の原因ではない

ずっと、そう訴え続けてきた人がいます。
高鍋町でずっと水牛を診てきた池亀獣医師です。

今までも池亀獣医師の書かれた物は、このブログでも紹介してきました。

今回は、日本獣医師会雑誌8月号に寄稿された文章をこのブログに載せることを承諾して頂けましたのでご紹介します。

日本獣医師会雑誌 2012年8月号より
(読みやすいように当方で改行を加えたものです)

4月20日 「口蹄疫を忘れない日」

 池亀康雄 (池亀獣医科病院院長)

一昨年の本誌第63巻第10号で「宮崎県口蹄疫発生第6例目(水牛農場)に遭遇した臨床獣医師からの報告」をさせていただいた。今回は2年を経過した近況を報告したい。

口蹄疫終息直後は、県の報告で8割以上の被害農家が経営を再開すると答えていた。現在、経営を再開した戸数が、60パーセント、また家畜の導入頭数は以前の59パーセントにとどまっている。

再開しない理由は、農家の高齢化、耕種転換、飼料穀物の高騰、牛枝肉価格の下落、いまだ感染経路の究明もできず、東アジアで相次ぐ口蹄疫の発生などの不安要因が挙げられる。加えてTPP参加問題もあり厳しい状況だが、何よりも時間が経つにつれ、やる気力がなくなったことである。

昨年の「被害農家の心と体への影響調査」では約2割で鬱や不安障害、アルコール依存など健康への影響が報告されている。

一方、再開農家で後継者がいるところは一気に世代交代し、生産性の向上を柱に、全国のモデルとなる安心・安全な宮崎の畜産を目指している。

行政は、畜産の再開に向けて、農家への防疫指導や観察牛(おとり牛)の検診など早くから民間獣医師の活用を謳っていたが、ここでいう民間獣医師とはNOSAI獣医師のことで、我々産業動物開業獣医師には、声がかからなかった。いざ農家に家畜が導入された時、防疫上、不必要に農家に立ち寄れず、日常の診療業務で置き去りにされた感じがする。いずれにせよ我々産業動物専門獣医師は、単純に計算しても、以前の4割はいらないことになる。TPP参加後の日本の畜産の姿を先取りしている印象がある。

さて、現在の診療内容は初産牛がほとんどのため、過大胎子の難産事故が目立つ。今のところ、オールアウト後の消毒の徹底もあり、飼養環境にゆとりがあるせいか、他の病気の発生は少ない。
近頃では、畜産農家でも口蹄疫の話題は出なくなった。決して忘れたのではない。悲惨な体験をした当事者にとって、前進するには、心の傷に触れたくないというのが本音である。

そのような時、宮崎県の地元紙(宮崎日日新聞)に「4月20日『口蹄疫を忘れない日』に」と題する記事があった。

抜粋すると、「平成22年、本県を震撼させた口蹄疫の発生から間もなく2年を迎えようとしている。あれほどの惨劇を経験しながら、県内を見渡すと、残念ながら危機意識の劣化を感じさせる光景に出くわす。そこで、宮崎日日新聞社は記憶の風化に歯止めをかけるため、先の口蹄疫で初の感染疑いが確認された4月20日を『口蹄疫を忘れない日』にすることを提唱する。『忘れない』ための方策として、今年は口蹄疫に関する本を題材とした読書感想文コンクールを実施。4月20日の紙面で入賞作品を紹介する。」とある。

私は一人でも多くの方々に問題意識をもっていただきたいという思いから、かねてからの所感の一端を綴り応募した。

 国の疫学調査チームは、初発水牛農場と断定しているが、感染経路不明のまま調査を終了した。しかし、私にはこの結末を容認すると、後世で、また惨事が繰り返されるという、強い危惧の念がある。

 正しい情報の開示なしに県民、県と国の一体化はあり得ず、口蹄疫侵入経路の徹底究明が頓挫した最大の理由でもあろう。

地元紙に掲載された私の感想文を読んだ、川南町JA内にある、クリーニング店のおばさんが「水牛が口蹄疫を日本へ持ち込んだと、今まで思っていました。みんながそういっていたし、その後の報道も規制されていたみたいだし、水牛ではなかったのですねぇ。」と話しかけてきた。

全国の会員の中には、まだ水牛が口蹄疫の感染源と考えている方もいると思われる。皆様の支援に応えるためにも、今後とも、口蹄疫侵入経路の究明に取り組んでいくつもりである。

なお、正しい情報の開示を求める機運が高まることを切望して、以下に4月20日 宮崎日日新聞に載った拙文を紹介させていただく。
 

南 邦和・小詩集 記録詩(長詩)「口蹄疫」を読んで

宮崎日日新聞文化欄の「口蹄疫経過 長詩に記録」という見出しにひかれ早速取り寄せた。詩の形式だから文にリズムがあって引き込まれる。

口蹄疫の発生から終息までの間に起きた事象や新聞に投書された人々の思い、また用語の解説なども盛り込まれて〈あの時〉が臨場感を伴って鮮やかに蘇る。

自分の生活の場が、町が、県が、国が口蹄疫の大きな渦に呑み込まれ混乱した。当時の悲惨な状況がひしひしと迫ってくる。経時的に淡々と語られる叙事詩ならではの説得力がある。

詩の冒頭で「都農町で一頭の水牛に症状がでた/ふるさとに水牛がいたことを知ったのは/この時からだが・・・東南アジアから持ち込まれた水牛たちが/この口蹄疫の源泉になろうとは・・・」と詠んでいる。

私は水牛を診療していた獣医師として、この一節にはひどく打ちのめされた。日本では水牛に対する誤解と偏見がある。“水牛”というとアジア/アフリカの発展途上国のイメージが優先しているがイタリアでは水牛酪農は確たる地位を築いている。20世紀後半にはアメリカ合衆国、ブラジル、オーストラリアなどの畜産先進国でも水牛の乳肉生産が行われるようになった。

また、「一日遅れれば 一億円の被害・・・」とも詠まれている通り、国は口蹄疫侵入経路の徹底究明よりも、一刻でも早い清浄国復帰が国益であり国是であると判断した。これらの要因が重なって“初発水牛ありき”のシナリオがつくられ、メディアに発信された。その情報を鵜呑みにして疑わない世間一般。非常事態の中でこそ、氾濫する情報の真偽を冷静に見極めたい。

日本人は総じて水牛に関し無知であった。都農町に導入された水牛は口蹄疫清浄国であるオーストラリアから直輸入したものだ。検疫時の抗体検査も陰性と報告されている。断じて“源泉”ではない。真実が伝わらず、バッシングの嵐に気丈に耐えていた若い水牛農場主を思うと、胸が締め付けられる。この詩中の言葉を借りて言うならば“水牛は死んでも死にきれない”

さて、国益とは何であろうか。私は嘘、偽りのない正しい情報の開示と徹底した検証が大前提であり、それを基に皆が協力し、地域に即した防疫体制を構築することが一番重要であり、真の国益であると考える。

詩はさらに「『口蹄疫』は まさしく〈戦争〉なのだ/細菌と人間の 人間と人間の 地域と地域の/今こそ 政治の力と良識が発揮されるとき」と語りかける。後世に禍根を残さないためにも私たち一人一人が良識を発揮して、真の“源泉”を究明する時ではないだろうか。あの4ヶ月の間に、私たちは実にさまざまな体験をした。この詩を読んで改めて思った。
口蹄疫ウイルスの猛威、東日本大震災、巨大津波、放射能汚染など次々と起こる災害に私たち人間は、今こそ生き方を問われている。
                                     宮崎日日新聞 提供

※関連(池亀獣医師・各種投稿文書)

宮崎県口蹄疫発生第 6 例目(水牛農場)に遭遇した臨床獣医師からの報告
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06310/a5.pdf

2010年口蹄疫の現場から(宮崎県獣医師会児湯支部)
http://www.miyazaki-ombuds2.org/files/juishikai/ikegame_juishi.pdf

口蹄疫防疫の課題(家畜衛生学雑誌第37巻1号)転載
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/37.html

※関連 宮崎オンブズマン 口蹄疫情報公開請求

http://www.miyazaki-ombuds2.org/kouteieki.php

第6例目 水牛農家に関する文書

・病性診断記録簿
・不明疾病の現地調査について
・口蹄疫症状の聞き取りについて

http://www.miyazaki-ombuds2.org/files/sindankirokubo/result003.pdf

※関連(当ブログ内記事)

「口蹄疫を忘れない日」読書感想文と水牛のこと(2012/05/14)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2012/05/post-9d40.html

口蹄疫・水牛農家さんは今(2011/12/23)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2011/12/post-4db3.html

最後に、これだけ転載。

25時:流言とデマ /宮崎

 口蹄疫取材では、農家への訪問自粛を余儀なくされた。被害農家の心情に配慮し、取材活動で感染を拡大させないよう気を遣ったつもりだが、後悔もある。

 爆発的に感染が広がる間の取材は電話が頼り。窮状を訴える農家の生の声に、口蹄疫がいかに怖い病気かを実感した。インターネットで流布した「報道規制」はデマだが、当初から質量ともに十分な報道ができたか……。

 農家への中傷に腹立たしく思うこともあった。特に初発と推定される水牛農家には「国会議員の紹介で発生国から研修生を受け入れた」「自殺した」などの心ないうわさが出回った。県が十分に裏付けせず来訪者を「不特定多数」と農林水産省に報告したのも、結論ありきに思える。

 農場は狭い道を上った山奥で、簡単に観光客が行けるような場所ではない。国の疫学調査チームは中間報告で「海外からの従業員や研修生は受け入れていない」と否定した。

 災害時の不安な心理下で広まる情報の危うさは「流言とデマの社会学」(広井脩・著)が指摘している。異常事態の中でこそ、冷静に情報の真偽を見極めたい。【石田宗久】

毎日新聞 2010年9月6日 地方版

追記

JASV口蹄疫終息記念セミナーの講演により次の事が明らかになりました。

当該水牛は、口蹄疫の発生していないオーストラリア生まれのオーストラリア育ち。その水牛を他のどの国にも寄港せず、直接日本に輸入した。

 よってもともと口蹄疫ウイルスを持っていたということはない。

また、動物検疫の際に、採血し、残っていた水牛の血清についても検査して、口蹄疫ウイルス抗体が陰性であったことが分かった。

口蹄疫ウイルスの侵入経路(JASV口蹄疫終息記念セミナーの講演より)

http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2012/10/jasv-d75a.html

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