米沢牛の定義が変わるらしい
日本3大和牛と言われる米沢牛。
(この3大和牛、松阪・神戸と、あと一つが近江だったり米沢だったりするのはなぜなんでしょう?)
この米沢牛の定義が、より厳しくなるらしいです。
米沢牛と言えば、昨年1月(記憶で書いてます。間違ってたらごめんなさい)に
「米沢牛の定義」を変更したばかりなんですよね。
それまでの定義は
生後月齢30ヶ月以上のもので社団法人日本食肉格付協会で定める4又は5等級の外観並びに肉質及び脂質が優れている枝肉とする
但し、3等級の中でも、生後月齢32ヶ月以上のものは認めるものとする
現在の米沢牛の定義は
生後月齢32ヶ月以上のもので社団法人日本食肉格付協会で定める3等級以上の外観並びに肉質及び脂質が優れている枝肉とする。
要するに、より長い肥育期間を設けることになったわけです。
(肥育期間が長いと、一般的には旨味が増すと言われています。)
今回の定義の変更は、より厳しいものになるそうです。
大きな変更点はふたつ、
★出産を経験していない雌牛または去勢牛
↓
未経産の雌のみ
★枝肉重量の上限を決める
(500キロを目安に調整中)
雌だけというのは、松阪牛がそうですね。
また枝肉重量の上限は、神戸ビーフで「470キロ」というのが決められています。
ブランドの定義をより厳格化することで、ブランドイメージ・ブランド力を高めようというのが狙いのようです。
「米沢牛」雌牛のみ認定へ、全国で最も厳しく
読売新聞 山形版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news/20120620-OYT8T01298.htm
全国的な和牛ブランドとして知られる米沢牛の定義について、米沢市周辺の生産農家などでつくる「米沢牛銘柄推進協議会」(会長=安部三十郎・米沢市長)は20日、現在は認めている去勢牛を対象から外し、うま味が強いとされる雌牛のみを認定することを決めた。枝肉重量の上限も設け、和牛ブランドの中で「最も厳しい認定基準になる」(銘柄推進協)という。2014年12月から適用する。
推進協事務局によると、11年度に出荷された米沢牛2211頭のうち、去勢牛は7%。雌牛の方が、うま味成分のオレイン酸が豊富だといい、全国のブランド牛では、松阪牛が雌牛のみを認定している。松阪牛協議会事務局(三重県松阪市農林水産課)は「牛肉の品質向上は常に課題」と話す。
枝肉重量も、500キロを超えるような大きさになると、味が落ちると言われる。重量制限の設定は今後になるが、神戸牛では「1頭当たりの枝肉重量は470キロ以下」との基準がある。JA全農兵庫畜産課は「牛が大きくなるほど、評価が落ちる」と説明する。
米沢牛の新基準は、これら二つのブランド牛の基準を取り込んだもので、全国で最も厳しい内容になる見通し。
米沢牛の定義の改定は、山形おきたま農協の米沢牛振興部会が、昨年夏から検討してきた。特に去勢牛の取り扱いに関しては、子牛の繁殖から肥育まで手がける「一貫経営」の生産者が、去勢牛を出荷できなくなると経営が圧迫される懸念があるため、同部会でも最後まで慎重な意見があった。
ただ、近年は消費者から「米沢牛の味が落ちた」などの指摘が増えているという。東京電力福島第一原発事故の風評被害で価格が低迷し、その後も震災前の水準まで回復していないこともあり、「味にこだわり、ブランドイメージを高めなければ、産地間競争を生き残れない」と危機感が強まっていた。
20日開かれた推進協の総会では、去勢牛を対象外とする同部会などの提案に対し、出席者から「去勢牛を出荷する生産者は困る。もっと議論すべきだ」「牛の大型化で、米沢牛の味が落ちている。重量を制限することが先だ」などの意見も相次いだ。
これに対し、山形おきたま農協経営役員会の木村敏和会長は「生産者も原発事故で大変な思いの中、『米沢牛の名声を高めよう』とまとまった。今、改定ができないと、時間だけが経過する事態になる」と訴え、最終的に理解を得た。
このため、当初は予定していなかった枝肉重量の上限も新定義に盛り込まれることになった。また、新基準適用まで約2年半の猶予期間を設け、現在の子牛が出荷できるように配慮した。
◇米沢牛の定義 米沢市など置賜地方3市5町で生産される牛で、〈1〉登録牛舎で18か月以上継続して飼育〈2〉黒毛和種の出産を経験していない雌牛または去勢牛〈3〉生後32か月以上で肉質、脂質が優れた枝肉――など4項目がもともとの内容。これに昨年12月、原発事故を受けて「放射性物質が不検出」との項目が加わった。
◇中国での商標登録急ぐ
「米沢牛」の名称が中国で3件商標登録出願され、すべて無効と判断された問題で、米沢牛の国内での商標の権利者となっている山形おきたま農協は、20日の米沢牛銘柄推進協議会総会で、「今後も同様の申請が行われる可能性がある」として、中国での商標登録申請を急ぐ考えを正式に表明した。
同農協生産販売部は「協議会の了解が得られたので、速やかに手続きを進めたい」としている。
(2012年6月21日 読売新聞)
米沢牛:「去勢牛」を除外 銘柄推進協が定義改定 14年12月から /山形
毎日新聞 2012年06月22日 地方版http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20120622ddlk06020006000c.html
米沢牛銘柄推進協議会(会長・安部三十郎米沢市長)は20日、米沢牛の定義から去勢雄牛を外し、「黒毛和種の未経産雌牛」だけにすることを決めた。14年12月から適用改定する。併せて味が落ちないよう枝肉重量制限も定義に導入する。
未経産牛は、うまみ成分のオレイン酸が去勢牛より1%高く霜降りも細かいなど食味が良く、市場購買者からの出荷希望が多い。また500キロ以上の大き過ぎる枝肉は肉質が落ち、扱いにくいと市場から嫌われる傾向にあった。このため食味向上と品質均一化を進め「本来のおいしさ」強化を図る目的。
米沢牛は11年度2211頭出荷されたが、去勢牛の割合は7%で減少している。去勢牛除外は昨年から大きな課題だった。1年間かけ生産者の米沢牛13件振興部会と繰り返し協議したうえで決定した。
改定を2年半後としたのは、現在去勢牛が肥育されていることや、子牛生産など肥育繁殖農家の経営を圧迫しないため。同協議会とJA山形おきたまは管内の置賜3市5町の畜産農家に今年度からは導入しないよう呼びかける。枝肉重量制限は当初500キロ以下を目安に調整していくという。【近藤隆志】
このブログでは以前も牛の大型化の話を書いたことがあります。
一頭の牛にかかる手間はかわりませんから、同じ20ヶ月間かけて肥育するなら、より大きな牛に育て上げ、枝重量を稼いだ方が効率が良い訳ですね。
そこで和牛農家は、より増体の望める血統の牛を好んで飼育するようになり、市場においても重量が500㎏を越すような枝肉がザラになってきました。
東京中央卸売市場の枝肉共励会の平均(肉牛ジャーナルより抜粋)
★H15年度
枝肉重量・・・・・平均471.1㎏(去勢492.2・雌402.2)
ロース芯面積・・・平均 56.1c㎡(去勢 57.2 ・雌 53.4)
★H20年度
枝肉重量・・・・・平均504.1㎏(去勢527.3・雌436.6)
ロース芯面積・・・平均 59.6c㎡(去勢 60.3 ・雌 57.4)
増体(牛が大きくなる)は、生産者にとって確かに良い事なのだが、食べる方には
どうなのよ、って話でした。
今、牛が大きくなりすぎてステーキが薄くなってるってことを書きました。
味に関しては書かなかったのですが、今回のこの新聞記事、ずばり
「牛の大型化で、米沢牛の味が落ちている。重量を制限することが先だ」などの意見も相次いだ
と、書かれています。
神戸牛では「1頭当たりの枝肉重量は470キロ以下」との基準がある。JA全農兵庫畜産課は「牛が大きくなるほど、評価が落ちる」と説明する。
とも、あります。
神戸牛のほうは「評価が落ちる」とは言っていますが「味が落ちる」とは言ってません。
牛が大型化すると果たして味が落ちるのでしょうか?
味がどうかまでは食べ比べた事がありませんので、何とも言えないのですが、
買参人さんに、大きな牛よりあまり大きくない牛の方が好まれるのは確かです。
(枝重470キロ未満の神戸牛に限らず)
大きくなるとどんなデメリットがあるのか?
このあたりはお肉屋さんの方が詳しいのですが、実際に買参人さんなどに聞いた話の中で分かる範囲を書いていきます。
ま、聞いた話ですし、きちんとした統計が出ているわけでもありませんから
「そんな説もある」という程度で読んで頂ければ。
(但馬牛と他県産の枝肉を比べた研究では、他県産の枝肉重量が大きい方が食味の官能検査結果が劣るというのはあります)
☆大きな枝肉は扱いにくい
よく言われることですが、扱いにくいってのがよくわかりませんね。
神戸の卸屋さんに聞いてみたら
「焼肉屋さんはそうでもないけど、ステーキを扱う店ではあまり大きいのは嫌われるなぁ」
とのことでした。
肉屋さんだと「でかすぎてスライサーに入らん!ぼけぇ!」というのもあったようです。
最近は、お肉屋さんや飲食店が大きな肉に慣れて、昔ほど敬遠されないとも聞きます。
本当は小さめが欲しくても、大きな枝肉に慣れざるを得なかった、というところでしょう。
☆大型の牛、特に胴が長い枝肉はサーロインが充実していない
サーロインの形が先細り(極端に言えば円錐形に近い)で充実していない。
サーロインは高く売れる部位ですから、肉屋さんにとっては重要な問題になります。
☆大きすぎる枝肉は、おおむね荒ザシである
特に平茂勝の流れを汲む大型の牛は荒ザシの傾向が強い
☆大きな枝肉だと、キメが粗くなる傾向がある
荒ザシであれば、口当たり・舌触りも悪くなります。
キメが荒くなれば、ジューシーさが損なわれることがあります。
「味が落ちた」と言われる原因の一つは、このあたりかもしれません。
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サシ過剰の肉もそうですが、生産者が喜ぶ肉と肉屋さんが喜ぶ肉、消費者が喜ぶ肉が違ってきていると、このブログでも書いた事があります。
今回の米沢牛のブランド定義の変更の目的が「本来のおいしさ強化」であるならば、ある意味では「消費者が喜ぶ肉」への回帰がなされるのかもしれません。
おまけ
神戸ビーフの枝肉(左)と山崎畜産の枝肉(右、父:梅福6)です。
神戸ビーフは御存知のように「但馬牛(たじまうし)」です。
但馬牛の枝肉は、全体にほっそりと流線型をしてる傾向があります。
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コメント
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米沢牛の定義・・・いろいろ考えさせられますね~
更に気高系(平茂勝系血統)以外なんて項目が追加されたら、ほとんどの繁殖農家は
「!!(゚ロ゚屮)屮」「(lll゚Д゚)」の状態になってしまいますね(ノд・。)
逆に平茂勝系血統が入っていない血統も残しておいたほうがいい時期が来るのかもしれませんね。
時代をよむ、消費者ニーズ(消費者が喜ぶお肉)をよむ・・・大事なことですね。
投稿: はまちゃん | 2012/06/27 10:08
はまちゃん
荒ザシに関しては、忠富士と勝平正が全く違うサシの入り方で、
母体次第で変わってくるみたいですから 平茂勝の流れは全部ダメって話には
ならないでしょうが・・・・。
最近では平茂勝の入っていない血統を探すのが難しいくらいです。
それ位すごい牛だったわけでしょうが、功罪併せ持った牛でもあったのですね。
今回の枝重制限は米沢牛だけですが、これが他のブランドにまで大きく広がったら
種雄牛も増体より肉質重視の改良に変わっていくのかもしれません。
個人的には、サシが入りやすい血統、大きくなる血統は
「もう、そろそろいいよ」って感じなんですが、そういうわけにもいかないんでしょうね。
投稿: センム | 2012/06/27 21:24