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2012/02/16

被害者って言葉についてちょいと考えてみた

半年ぐらい前から考えていたことがあります。

「被害者」という言葉について。


口蹄疫の被害を受けた宮崎、という言葉がよく使われます。

ウチも「口蹄疫の被害を受けた宮崎」の畜産農家なわけですが、
私は自分が「口蹄疫の被害者」だと思ったことがありません。

「宮崎は口蹄疫の被害で大変でしたね」と言われれば、すんなり受け答えができるけど、
「口蹄疫の被害者の一人として、どう思われますか?」なんて聞かれれば、
いや、私は直接の被害者じゃないですから・・・と答えてしまうでしょう。

「宮崎」や「宮崎の畜産農家」を応援してもらえると、素直に嬉しいです。

「被害を受けた宮崎の畜産農家」の一人として、本当にありがたいと思っています。

でも、自分の事を「口蹄疫の被害者」だとは思っていない・・・
私だけかな?と思って相方に聞いてみましたら、
「オレも自分が被害者だと思ったことはない」という答え。


ウチも移動制限区域に入って、牛の出荷が出来ず一切の収入が途絶えた時期がありました。餌代や消毒薬・従業員の給料などお金が出ていくばかりだったから、そういう意味では被害を受けたはずなんだけど、夫婦して被害者としての自覚がないわけです。

宮崎県内の畜産農家は殆どウチと同じ状況だったわけだけど、他の人は自分の事を被害者だと思っているのかなぁ。

じゃぁ、被害者って、どこからどこまでが被害者なんだろう?

家畜を殺処分された農家は、間違いなく被害者

口蹄疫が爆発的に広がった地域の小売店や飲食店も被害者かもしれない

同じ地域の、餌屋さんや運送会社、獣医さん、削蹄師さん、受精師さん、敷料の会社など、畜産関連の仕事をしている人も被害者と言えるよね

じゃぁ宮崎県内の他の地域の小売店・飲食店・畜産関連に従事していた人も被害者かな

移動制限地域は鹿児島や熊本にもあったわけだから、その地域の人たちも被害者だよね

宮崎県内だけでなく日本全国の畜産農家も色んな苦労をしていたはずだから、被害者に入るかもしれない


口蹄疫の防疫作業で怪我をした人、心労で倒れた人も被害者


殺処分という辛い作業にあたった獣医さんや自衛隊の人たちも被害者かもしれない


口蹄疫が広がらないようにと尽力してくれたJAの人、市町村職員、県の職員、防疫作業にあたってくれた地域の有志の人たちも被害者に入るのかなぁ

じゃぁ農林水産省の人や、全国の自治体の職員さんも被害者?

あ、家畜が減ったことで売り上げの減った飼料会社や製薬会社も被害者か

口蹄疫のせいで売り上げが減った全国の焼肉屋さんだって被害者に入る?

お気に入りだった水牛のチーズが食べられなくなった人だって、ある意味被害者かもしれない

考えれば考えるほど被害者は多そうで、どこからどこまでが被害者か?なんて答えはでそうにありません。

それだけ与える影響が大きいのが口蹄疫だということかもしれません。


私としては同じ宮崎の畜産農家として、実際に家畜が感染してしまった農家さんや防波堤になってくれたワクチン接種農家の人達の事を考えると、自分の事を「被害者」なんて簡単に言う事ができない部分もあるのです。

というか、そういう思いから、無意識の内に自分を被害者の枠から除外してしまっていたのかもしれません。

家畜を殺処分せねばならなかった農家さんの中には、友人もいますから。

少なくとも私は、宮崎の畜産農家(家畜を殺処分された以外の)が、自ら「口蹄疫の被害者です」と名乗るのを見たことも聞いたこともないのだけど、それはきっと、私と同じような事を感じているからなのかもしれないと思うのです。

私にとっては、重い、なかなか簡単に使えない言葉だったりもします。

でも、自分自身が被害者だと思えば、その人は口蹄疫の被害者なんですよね。

宮崎からは遥かに遠い地方の畜産農家の方が「自分は九州の(口蹄疫の)被害者で、その上に東電の被害者だ」という様な事をつぶやいていたのをネット上で見かけました。

その時は、ものすごく違和感を覚えたけれど、冷静に考えてみれば決して間違ったことを言ってるわけじゃない。
確かに口蹄疫の被害は全国の畜産農家に及んでいるのですから。
彼もまた、口蹄疫の被害者に違いはないのです。

畜産農家に限らず、その人が何らかの被害を受けたと感じれば
「自分は口蹄疫の被害者だ」と言うのは決しておかしな事じゃないんです。

例えば、宮崎に家族旅行をしようと思っていた人が、口蹄疫が起こったので旅行を取りやめた。
楽しみにしていたのに行けなくなって心的苦痛を味わった。
おまけにキャンセル料も取られて金銭的にも被害を受けた。
だから自分も口蹄疫の被害者だ、と思えば、その人もまた被害者なんでしょう。

いや、いくらなんでもそれは違うんじゃないの?と思う人もいるかもしれない。
でも、本人が「口蹄疫の被害者です」と主張すれば、誰もそれを否定することはできませんよね。
他の人がどう思っても、本人が被害を受けたと感じてるんだから。


事故や事件の様に「加害者」がいれば、「被害者」も限られてくるのでしょうが、相手が天災や疫病だったりすると、とたんに被害者の範囲があやふやになってしまいます。
どこかで線引きできる問題じゃないんですよね。

こういう事を書くと「いや、口蹄疫は某大規模牧場が引き起こした事件だ」とか「政府の無能さがなんたら・・・」とか言い出す人が出てきそうなんだけど、多くの畜産農家にとって、口蹄疫は家畜伝染病以外の何物でもないのです。


その人の立ち位置によって、「被害者」って言葉は色んなふうに取れるし、色んな意味合いを含んでいる、とても「ややこしい」言葉だよなぁ・・・
なんて、口蹄疫から2年近くも経って、あらためて思った次第です。

いや、それだけの話。長くてごめんね。

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