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2011/09/27

口蹄疫・読売新聞(宮崎) 復興の課題

読売新聞でも宮崎版で連載企画を組んでくれている。
(アンダーラインはやまさき)

過密飼育改善進まず


農家強い抵抗、県「収益も念頭」

 「頭数を減らせば収入が減る」「畜産県なら飼育密度が高くなるのは当たり前だ」――。

 県庁で7月に開かれた牛豚の飼育密度に関する意見交換会。県が打ち出そうとする“過密緩和”の方向に、出席した畜産農家から反発する声が相次いだ。

 昨年、県内に甚大な被害をもたらした口蹄疫で、国や県の検証委員会は、家畜の「過密飼育」が拡大の一因になったと指摘。県は再発防止策の一環として、過密の解消を検討し始めた。


 意見交換の場で、県の担当者は、牛と豚の頭数に対する都道府県面積の比率を提示。鹿児島県に次いで2番目に狭いことを示して、過密飼育をアピールしたが、農家側の抵抗は想像以上だった。

 2回の会合を経て、県は近く飼育頭数の指針を取りまとめるが、強制力のない基準にとどめる方針だ。

 座長を務めた県畜産・口蹄疫復興対策局の永山英也局長は「極めて難しい課題。防疫だけでなく、農家の収益も念頭に置かないと」と、生産者側への配慮を示す。

 畜産振興の旗を振る県は、農家とともに経営の効率化を推進する立場を取ってきた。これまでの手法を翻し、一転して過密緩和を打ち出すのは現実的ではないと判断した。

    ◇

 宮崎市などで母豚約800頭を飼育する日高養豚場の日高省三専務理事(56)は「豚は一頭あたりの利益が1000~2000円。ある程度の頭数を飼育しないと、安定的な収入にならない」と語る。

 ただ、宮崎大の長谷川信美教授(家畜管理学)は「過密状態だと行動の自由がなくなり、ストレスで免疫機能が低下する。病気の多発や突然死、肉質の低下などを招く恐れがある」と指摘する。

 長谷川教授によると、欧州連合(EU)では飼育環境などに配慮した「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の観点から、子牛(150キロ・グラム未満)一頭あたりの飼育面積1・5平方メートルなどの基準を示し、加盟国が法律で飼育密度を規制しているという。

 アニマルウェルフェアに基づいて飼育された家畜の肉には、認証ラベルを貼って販売。意識の高い消費者が好んで購入するなど、付加価値も生まれている。長谷川教授は「生産の現場を変えるには消費者の意識を変える必要がある」と主張する。

    ◇

 県内で約30万頭の牛や豚が犠牲になった口蹄疫の終息宣言から1年が過ぎた。復興、再生を目指す畜産農家や行政の取り組み、課題を探った。

(2011年9月23日 読売新聞)

畜産からの転換手探り

受け皿整備、西都に冷凍野菜工場

 「陸上選手が水泳選手になるようなものだと思うんです」

 口蹄疫の終息宣言から丸1年となるのを控えた8月26日、河野知事は記者会見で、畜産農家が畑作にくら替えすることの難しさをスポーツに例えて表現した。

 約30万頭の家畜が犠牲になった昨年の口蹄疫は、5年間で2350億円ともされる経済損失を被る打撃となり、畜産が県全体に及ぼす影響の大きさを知らしめる結果となった。これを機に県は、畜産に偏る農業からかじを切る方針を取り始めた。

 昨年8月に策定した口蹄疫からの再生・復興方針で掲げた旗印の一つが「畜産から耕種へ」。家畜の密集を防いで口蹄疫の蔓延(まんえん)リスクを軽減するとともに、被害農家の廃業による地元経済の減速にも歯止めをかけられると判断した。

 ただ、知事が口にしたように、終息から1年を経た今も、転換は思うように進まず、絵に描いた餅になっている。

 口蹄疫で24頭の牛を失った川南町の石川以和保(いわお)さん(64)は、後継ぎもいないことから畜産を断念。兼業していたキャベツやサトイモ作りに専念し始めた。

 ただ、餌やりのために夜明け前から起きていた生活スタイルは激変し、収入も落ち込んだ。石川さんは「新しい生活に慣れるのに精いっぱい。ゼロから始める人は大変だろう」と言う。

 JAグループの子会社「ジェイエイフーズみやざき」は8月、西都市で九州最大規模の冷凍加工工場の操業を始めた。野菜の栽培農家と一括して買い取り契約を結ぶため、農家の収入が安定し、「耕種転換への受け皿になる」として、県と国は総事業費20億円のうち半分を助成した。

 しかし、ホウレンソウの出荷を契約した農家86戸(作付け面積150ヘクタール)のうち、口蹄疫の被害農家は2戸(5ヘクタール)のみ。いずれも口蹄疫の発生前から畜産と畑作を兼業していた農家で、畜産から完全に乗り換えたケースはない。

 県の口蹄疫対策検証委員会で座長を務めた宮崎大工学部の原田隆典教授は「発生前と同じような規模で畜産が再開されても、ひとたび感染が拡大すれば、深刻な事態が想定される。県は国や市町村とも協力して、目指すビジョンを明確に示し、畑作だけでなく、他の産業への転換も含めて、最大限の後押しを検討するべきだ」と指摘する。

(2011年9月24日 読売新聞)


初動態勢強化でコスト増

県「感染拡大防ぐ基本的対応」

都城市で口蹄疫が疑われる牛が見つかり、県庁で急きょ開かれた対策本部会議(4月25日)
 県内で口蹄疫の感染が確認されて1年が過ぎた今年4月25日、都城市の畜産農家で牛に異常が見つかった。獣医師が7頭の口の中にただれなどを確認し、「口蹄疫のような症状」とする診断結果が伝えられると、畜産業界に緊張が走った。

 県は4月に全面改定したばかりの「口蹄疫防疫マニュアル」にのっとって初動態勢を取った。検体の遺伝子検査結果が出る前に報道機関に連絡。陽性と分かり次第、すぐに殺処分や埋却ができるように、資材や人を確保し、半径20キロの約4600農場に牛や豚の移動自粛を求めた。隣接する小林市で翌26日に予定されていた家畜市場にも中止を要望した。

 26日早朝に陰性と判明したが、あらかじめ農場近くに待機させていた県職員らの人件費などに約60万円の費用が発生した。費用は県が負担した。

 ただ、遺伝子検査の結果が日中にずれこめば、重機のキャンセル料などが数百万円に上り、小林市の家畜市場も中止されると、経済的な損失はさらに膨らむ可能性があった。岩崎充祐・県家畜防疫対策室長は「コストはかかるが、感染拡大を防ぐ基本的な対応」と理解を求める。

 昨年、口蹄疫が蔓延(まんえん)した教訓から、初動態勢を重視したマニュアルとなったが、農家や獣医師からは戸惑いや不安も見え隠れする。

 宮崎市内で牛を飼育する畜産農家の男性(52)は「感染の有無がはっきしない段階で通報することで、周囲の農家や市場に迷惑をかけることもある。ためらう農家がいるかもしれない。報告しやすい環境を作ることが必要」と指摘する。

 また、マニュアルでは、発生初期の防疫作業について、県の家畜防疫員らが従事することを明記しているが、民間獣医師については「不足に応じて支援を要請」とする表現にとどめた。県獣医師会児湯支部の矢野安正支部長は「大規模農場に感染が広がると、経験豊富な開業獣医師を当初から動員しないと殺処分は追いつかない。昨年の経験を生かしきれていない」と苦言を呈する。

 県畜産・口蹄疫復興対策局の永山英也局長は「迅速に封じ込めるため早めの準備をすることで、経済的な負担が生じるのは確かだ。ただ、口蹄疫を経験した県として、他県の模範となるような対応も取らないといけない。経験を積み重ねることで、実態に合うようにマニュアルを改善していくこともできる」と話している。

(2011年9月25日 読売新聞)

地域経済の回復見えず


関連産業多岐、損失年400億円超の試算

8月に都城市で開かれた県牛削蹄競技大会(県牛削蹄師会提供)
 「ひいきにしてくれる農家が増えてきたところだったのに…。仕事は激減したが、若い自分がやめるわけにはいかない」

 口蹄疫ですべての牛や豚が殺処分された川南町で最年少の削蹄師(さくていし)、菊池敬典(けいすけ)さん(26)は、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 県立農業大学校(高鍋町)を卒業し、国富町のベテラン削蹄師宅に1年間、住み込んで修業を積んだ。実家は牛の繁殖農家。子どもの頃から慣れ親しみ、自分を育ててくれた牛と生涯かかわっていこうと、この道を選んだ。削蹄師として独立し、ようやく軌道に乗り始めたときに口蹄疫が襲った。

 削蹄師の仕事は、馬や牛のひづめを削って歩行のバランスを整える。畜産が盛んな県内では牛がメーンだが、農家が経営を再開しても、すぐに依頼があるわけではない。削蹄の頻度は母牛で年に1回程度、子牛は出荷前。母牛への種付けから子牛の出荷までは2年近くかかる。

 菊池さんは口蹄疫発生まで、月に80~100頭のひづめを削っていたが、現在は3分の1程度。仕事が全くなかった時期は、土木作業や精米所でのアルバイトで生活費を稼いだ。今後は母牛を購入して繁殖農家との兼業にするつもりだ。

 菊池さんは8月、2年ぶりに開かれた削蹄技術を競う県大会に出場し、約40人のうち、自身最高となる13位になった。九州大会に出られる8位入賞はかなわなかったが、「さらに技術を磨き、『あなただから頼みたい』と言われるような削蹄師になりたい」と語る。

 児湯削蹄会によると、児湯地域の削蹄師8人のうち、大半は50~60歳代。同会の河野久徳会長(59)は「仕事がないため、多くの削蹄師がアルバイトなどで、やりくりしているが、体力的にきつい状況」と話す。

    ◇

 「牛の往診は3分の1に激減した。病院経営は赤字」。やの動物病院(西都市)の矢野安正院長は頭を抱える。

 1日平均20件程度だった往診は今や5、6件程度。獣医師5人を雇用しているが、賃金カットで急場をしのいでいる。「経営を断念する農家も多い。往診数が以前と同じ程度に戻ることはないだろう」と話す。

 畜産が関係する業種は、ほかに人工授精師や食肉加工業、家畜の運送業者など多岐にわたる。東京商工リサーチ宮崎支店によると、県内の食肉処理工場の稼働率は、口蹄疫発生前の7割程度にとどまっており、牛や豚を中心に搬送する運送業者では、リストラなどで経営を維持しているところもあるという

 口蹄疫による畜産業や関連産業の経済損失を年間426億円と試算した根岸裕孝・宮崎大准教授(地域経済)は「地域経済の回復には数年かかる。復興には、川南町の軽トラ市のような、地域でお金を回していくための工夫も必要」と指摘する。

(2011年9月27日 読売新聞)


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