牛の肥育期間とお肉の関係の話(2)
▲2009年12月の「ひめつばき」・・・これが
↓
▼2011年4月・・・・こうなっています。
あと5~6カ月肥育したら、出荷されます。
前回は、
山崎畜産が関わってきた肉屋さんや卸屋さんに話を聞くと、やはり肥育期間が長い牛は味が濃いし、味に深みがある と言われます。
って事を書きました。
(チラッと、肥育期間が長いと経営も大変なんだって話も書いてありますが・・・・)
尤も、山崎畜産が出荷しているのは殆ど100%神戸市場ですから、たまたま神戸の人達が、そう言ってるだけかもしれません。
そこで、他の肥育屋さんや、買参人さんなどの市場関係者が「肥育期間と牛肉の関係」について、どう思っているのか「肉牛ジャーナル」や「養牛の友」(どちらも牛飼い相手の専門誌)のバックナンバーを引っ張り出して読み返してみました。
やっぱりお肉のことは、農家なんかよりお肉屋さんや卸屋さんが詳しいのだ!
参考にしたのは
肉牛ジャーナル 2006年9月号(特集:牛肉の味にこだわる肥育農家)
2007年3月号(特集:最近の枝肉の傾向と将来展望)
2008年6月号(特集:市場関係者が見る枝肉評価のポイント)
2010年9月号(特集:市場関係者が見る枝肉のチェックポイント)
養牛の友 2008年7月号(特集:牛肉の「おいしさ」を探る)
とりあえず、肥育期間と肉質・脂質の関係について書いてあったことを箇条書きにしてみます。
★肥育農家(どちらも食肉販売・飲食店も手がけている)の話
K畜産
・平均出荷月齢は、32~33ヶ月、長いものでは35~37ヶ月。
・主にメスの方が脂質は良いが、去勢でも37ヶ月齢にもなればメスと変わらないほどの甘味のある脂になる。
T牧場
・30ヶ月齢と33ヶ月齢の物では、33ヶ月齢の方が脂肪質、キメ、締まり、全般に良好。
・月齢の長い方が、食べると脂がなめらかで風味がある。
★市場関係者(大手卸会社の仕入れ担当者・市場大動物担当者など)の話
・食肉業者が「味」を重要視し始めた。味は脂の質によるところが大きい。サシも脂の一部であるから、サシが入っていても脂の質が良くなければ引き合いが少ない。
・味については月齢ごとで分析をしたわけではなく具体的な根拠を示すのは難しいが、サシの全体的な抜けを見る時に月齢は一つの物差しにしている。月齢が若いと、リブロースとモモにサシがあっても、その間のサーロインにサシが抜けていないことがある。
・脂肪の質やモモ抜けは、ある程度の月齢により、若い枝肉に比べよい方向へ変化してくる。
・早出し傾向の肉では、モモの抜けが悪い。腹が仕上がっていない物も多く、そういった肉は水っぽい。できれば30ヶ月齢は飼ってほしい。
・しっかりモモまで抜けた、脂肪質のいい牛を作ろうとすれば、最低でも30ヶ月齢以上飼ってほしい。
・今の増体型中心の血統では、じっくり飼い込まないと脂肪質も良くならない。
・交雑種でも26ヶ月、できれば28ヶ月齢飼ったほうが望ましい。24と26ヶ月齢では、24日月齢が脂肪の乗りも肉色も悪いし、枝全体が水っぽい。
・・・・・こんな感じです。
長く肥育したもの、月齢が高いものの方が
・脂の質が良い
・サシが全体に抜けている
・肉質が水っぽくならない(キメ・締まりが良い)
という事は、肉を扱う立場の人にとっては共通の認識のようです。
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・・・・・と、ここまで書いてきましたが、頂いた質問は
>牛の肥育が長い程、味が濃くなるというのは本当でしょうか?
なんですよね。
「味は脂の質によるところが大きい」という意見(これについては、私も当ブログの中で何回も「肉の味は脂で決まる」と書いていますので異論は無い)は上に挙げた本にもありますが、脂の質が「味が濃い」事と関係があるのかは、結局、書いてありません。
神戸市場で聞いた
「肥育期間が長い牛は味が濃いし、味に深みがある」
という話とは、ちょっと意味合いが違ってくるのかもしれません。
月齢が高くなる経産牛が味が濃くて美味しいという話はよく聞くのですが、読んだ本にも経産牛の脂の質に関しても書いていないし、実際に「美味しい経産牛の肉」を食べた事が無いので、なんともよく分かりません。
実際今まで食べた牛肉を考えてみると
味が濃くて美味しい肉でも脂がくどくて、いつまでも口に残る
(味は濃いのに、脂質は悪い?)
すごくさっぱりした口どけの良い脂なのに、お肉の味が殆どしない
(脂質は良いのに、味が薄い?)
ってものもあったわけです。
そうなってくると、「脂の質」と「肉の味の濃さ」の相関関係ってあるのだろうか?と悩んでしまいます。
まるで、わけがわからん状態に陥ってしまいました。
が、とりあえず次回は・・・・
肥育期間の長さと、脂の質の関係について研究された物って、あるのかしら・・・・
なんて調べてみたら、あるんですね、これが。
その研究結果について書いていきます。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
すごく勉強になります。
確かに脂の融点は低くて触っていてトロトロ溶けていくいくような肉質なのに、期待して食べてみると、あれっ、っていうのがよくあります。
と思うと、脂まあまあ肉質は締まりがなくてズルズル、サシは全然はいってない、だめだこりゃって、食べてみると、感動するくらい美味しい肉だったなんてことがあります。
この後者の肉に当たると日本の牛の格付けって何だろうなって思います。高いお金だして買った立派なサーロインが食べてみたら味の無いもので、自分では納得いかなくても売ってお金にしなくちゃいけなくて。。。
投稿: 四 | 2011/04/27 09:41
おおっと
ひめつばき(◎´∀`)ノ
順調ですかね?
こういう自分の繁殖させた牛の飼育段階はなかなか見れないので嬉しくおもいます
肥育のお話の次の更新が楽しみです
かなり勉強になります(*^_^*)
投稿: しん | 2011/04/28 04:38
おはようございます
肥育期間とお肉について、オモシロイです
とても分かりやすくて勉強になります・・・
お肉が食べたくなったので、GWはBBQするつもりです・・・
雪が降らないことを祈ります・・・
投稿: 岩本肉吾 | 2011/04/28 10:34
四さま
枝肉って全部が全部セリにかけられるわけじゃなくって、芝浦や大阪の市場でのセリ価格を参考に決められる場合も多いのです。
その時に、全国各地どこでも公平に取引がなされるように・・・・と格付けがあるんですよね。
格付けがなければ、芝浦に出荷すればキロ2000円で売れたかもしれないものが、不当に買い叩かれて1500円にしかならない事もあるわけでして。
そういった不公平な取引がなされないためにも、全国で統一した規格が必要なのです。
とは言っても、格付けの高いものは値段も上がり、値段が高ければそれなりに美味しい物を期待するわけでして(苦笑)
特に、直に「お客さん」を相手にする飲食店の方からすれば納得のいかない事も出てくると察します。
・・・・が、やっぱり必要な物なんですよね。
物凄くジレンマを感じますが。
申し訳ないですが、よろしければ下のアドレス(センム宛)にメールを頂けないでしょうか?
riko@btvm.ne.jp
投稿: センム | 2011/05/02 00:56
しんさん
しんさん宛のサービスショットでございます
順調ですわよ!
yamato君ちの「やまと42」が残念ながら早期出荷となってしまいました(涙)
「ひめつばき」は、何としても枝肉の一部分でも買い戻せる様にしたいと思っております。
その時には、一緒に喰って「美味しいお肉をありがとう!ひめつばき」って言いたいものです。
投稿: センム | 2011/05/02 00:57
岩ちゃん
北海道は、まだ雪の心配をせねばならないのでしょうか・・・・
やっぱり日本って広いのねぇ。
あ、第二子誕生、おめでとうございます。
「全国を飛び回ってて、子供つくる暇がよくあったなぁ」って言ったらシャチョーに にらまれました。
投稿: センム | 2011/05/02 00:57