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2010/11/08

口蹄疫・宮崎日日新聞【検証口蹄疫】第4部(3)~(5)

【連載企画】検証口蹄疫・第4部(3) (2010年11月5日付)

~行政は十分に機能したのか~

■非常事態宣言/危機感浸透疑問視も

 消毒ポイントを素通りする車両や農場付近へ不用意に近づく人が後を絶たない中、県の口蹄疫防疫対策本部(本部長・東国原知事)は5月18日、非常事態を宣言した。県民の危機意識を高めながら、感染を助長する人と物の流れを抑制する狙いがあったが、感染はとうに爆発期に入っていた。

 宮崎大農学部の後藤義孝教授(獣医微生物学)は「地域経済への影響を考えると慎重になるのは分かるが、(牛よりもはるかにウイルス排出量が多い)豚で発生した時点(4月28日)で宣言してもよかったのでは」と考える。

 また、人と物の流れが活発化した5月の大型連休によって感染拡大が加速したと指摘。「宣言でなくても、一般県民に問題の重大さを伝え、協力を要請するアピールを出していれば被害を縮小できた可能性がある」と述べた。

■    ■

 宣言以降、図書館や公民館などの公共施設が休館、閉鎖となったほか、夏の高校野球宮崎大会も無観客試合となるなど「非日常」が続いた。また、外出を自粛する必要のない発生地以外の県民も地区の会合やイベントを中止するなど“過剰反応”が広がった。

 行事などが中止になる一方で、郊外の大型商業施設がにぎわうという状況が発生。日本銀行宮崎事務所が8月6日に発表した県金融経済概況は「6月に入ってからは各種イベントの中止や公共施設などの営業見合わせに伴い、客足が大型小売店に向かう動きが見られた」としている。

 県内経済に詳しい専門家は「ほかに行くところがなかったのだろう」と苦笑し、「非常事態宣言で危機感が全県民に浸透したとは言えない」と宣言の効果を疑問視する。

■    ■

 「すべてはフリーズし、業績は直角に落ち込んだ」。宮崎市商店街振興組合連合会の日高耕平副理事長は非常事態宣言が県内飲食業に与えた影響をそう表現する。県の推計によると、本県の経済損失は直接的な口蹄疫被害である畜産・畜産関連産業の1400億円に対し、飲食業・小売などその他の産業も950億円に上る。

 東国原知事は「当然、産業界が打撃を被ることは予測していたが、口蹄疫の終息を早めることが優先順位としては高かった」と述懐。日高副理事長は宣言の防疫上の必要性を認めながらも「政治家はプロとして宣言の副作用まで説明し、しかるべき対策を講じるべきだった」と話す。

 宮崎大教育文化学部の根岸裕孝准教授(地域経済)は「非常事態宣言が自粛ムードや風評被害を拡大させてしまった側面がある」とし、今後は「減災」の視点を持つことが必要だとする。

 減災は地震などの大規模災害時に災害を防ぐのではなく、被害を最小限に抑えようという考え方だ。根岸准教授は欧米で新型インフルエンザが流行した際、商工業の落ち込みを抑えて復興コストを軽減するため、公共施設や商店街などを閉鎖しなかった例を紹介。宣言について「防疫上不可欠な制限を示すと同時に、何が過剰な自粛なのかを明らかにし、慎むよう呼び掛けることも必要」と説く。


【連載企画】検証口蹄疫・第4部(4)
(2010年11月6日付)

~行政は十分に機能したのか~

■情報提供/時期、内容に課題残す

 県は当初、口蹄疫の感染が疑われる農場について検体採取を行うという情報ですら、事前に地元の町に知らせなかった。川南町の担当者によると、県から口蹄疫に関する連絡が来ていたのは検査結果の公表前日。そのために町の初動防疫は遅れ、「町道封鎖など対応は後手に回った」と県への不信感をあらわにする。

 都農町産業振興課の河野勝美課長補佐は発生農場の公表についてルール作りを求める。県、国が発生農場の詳細な所在地を公表しなかったため農家は感染の拡大状況や、効果的な対策を判断しにくかったという。「発生農家のプライバシーや心情への配慮は必要だが、防疫の観点からは情報は不可欠。公表の可否を確認しておくなどの備えが必要」と訴える。

 JA尾鈴は行政からの情報不足を補うため、農家への聞き取りなどで独自に発生農場などの情報を集め、周辺農家に注意を喚起した。だが、県内発生7例目となった大規模農場など組合員以外の情報は少なく、県に確認しても「個人情報」として入手できなかった。同JAの松浦寿勝畜産部長は「適切な情報提供があれば、被害の軽減も可能だった」と振り返る。

■    ■

 消費者に対する情報提供の在り方も問われた。県は畜産、関連産業を除く口蹄疫被害を約950億円と推計。専門家は、その多くが県民生活の自粛、風評被害に起因すると分析しており、「正確な情報発信により被害を少なくできたのではないか」という指摘もある。

 しかし、事件・災害が与える心理面への影響を研究する東洋大社会学部の関谷直也准教授(社会心理学)は「風評被害とは安全にもかかわらず、消費行動や接触を敬遠すること」と説明。今回の口蹄疫について「感染経路が解明されておらず、(運輸業の)トラックの往来や観光客の移動などは実際に感染を広げる可能性があったため、すべてを風評被害とは断定できない」と続けた。

 また、風評被害の防止は「報道規制以外になく、現実的に困難」とし、被害に対する補償など直接的な支援についても「ほとんど例がない」と述べるなど、行政による課題解決の難しさを口にする。

■    ■

 今年、県内最大級のイベント「全国高校総合文化祭」は口蹄疫の影響で4道県16校196人が参加を見合わせた。12校138人が辞退した北海道高文連事務局は「防疫についての態勢や情報などは直前になってから提供された。万全な態勢が整っていることをもっと早くにアピールしてもらえれば、状況は変わったかもしれない」と残念がる。

 隣県への情報提供にも課題を残した。鹿児島県畜産課によると、防疫に必要な情報を問い合わせた際、担当者と連絡が取れなかったり、情報が不足したりしたという。同課の北野良夫課長は「目の前の作業に追われていたのは分かるが、情報が半日早く入るだけで防疫態勢は違ったものになる。今後は積極的な情報提供を望む」とくぎを刺す。


【連載企画】検証口蹄疫・第4部(5)
(2010年11月7日付)

~最前線の市町村~

■役割と権限が不明確

 口蹄疫の感染が最も集中した川南町。発生直後から、町役場には農家や町民からの問い合わせが殺到した。役場内には国、県の現地対策本部もそれぞれ設置されていたが、町民が頼りにしたのは身近な町役場だった。

 しかし、町農林水産課の畜産担当はわずか3人。マンパワーの不足は歴然だった。電話対応だけでもパニック状態。曜日の感覚がなくなるぐらい働きづめだった。山本博課長補佐は「行政改革で全体の職員を減らしている中、今後、畜産担当を増やすことはできないだろう。口蹄疫が再発したら、畜産担当の経験がある職員を集めて対応する態勢が必要」と考える。

 今回の口蹄疫では、家畜の扱いに不慣れな職員も殺処分に従事した。しかし殺処分に携わった町内の50代の和牛繁殖農家は「家畜の扱いに慣れた職員が多ければ、殺処分がもっと早く進んだのではないか」と指摘する。

 感染拡大を抑えるには早期の殺処分が有効とされる。児湯郡内の30代の町職員は「すぐに現場に駆け付けられるのは市町村の職員。畜産が盛んな地域では、職員を対象に家畜の扱いを学ぶ訓練をすべきではないか」と提案する。

■    ■


 県との役割分担が不明確なため、防疫作業に支障を来す場面もあった。川南町では発生農場に県や町の職員が到着しても必要な資材が足りず、殺処分まで数時間待たされることがあったという。町農林水産課の山本課長補佐は「資材を発注するのは県。農場の規模を把握できないためか、必要以上に資材が届いた農場もあった」と話す。

 そこで、町内での発生については4月下旬から県と町の役割を線引き。殺処分を県が担当、町は埋却処分に専念することにした。町は埋却に入る前に職員を農場へ派遣し、必要となる資材の量を判断。県が資材を備蓄していた町役場から、必要な量を農場に運ぶようにした。

 山本課長補佐は「役割が明確になり、防疫のスピードが上がった。発生当初から町の権限や役割がはっきりしていれば動きやすかった」と語る。

■    ■


 約47万頭の家畜を抱えながら、感染を1農場で封じ込めた都城市。独自マニュアルをつくるなどして態勢を整えていたが、市畜産課の上西利茂課長は「発生農場の道幅が狭く、処分した家畜を運ぶための重機が入らなかった。埋却に必要な資材も足りないものがあった」と、想定外の事態が起きたことを明かす。

 小さめの重機を手配し直し、JA都城に資材を急きょ調達してもらい乗り切ることができた。だが、数頭を飼う和牛繁殖農場から、4万頭を飼育する大規模養豚農場まで経営規模は多様。すべてに対応できるマニュアルをつくる難しさを痛感したという。

 農家とのやりとりや人員・資材の確保、効率的な作業など防疫の最前線に立つ市町村の役割は大きい。上西課長は「感染が集中した児湯郡の自治体でしか得られない教訓があるはず。すべての市町村でそれを共有し、マニュアルなどに反映する必要がある」と役割への備えを訴える。

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