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2010/10/09

口蹄疫・宮崎日日新聞【検証口蹄疫】 第3部(1)~(4)

【連載企画】検証口蹄疫・第3部(1) (2010年9月27日付)

?混乱招いた種雄牛問題?

最初の特例(上)/避難先の調査足りず

 県の種雄牛を管理する高鍋町の県家畜改良事業団は、宮崎ブランドを支える拠点施設だ。隣接する川南町で口蹄疫の感染疑い2、3例目が確認され、家畜の移動制限区域に入った4月21日以降、矢継ぎ早に防疫策が講じられた。

 種雄牛と肥育牛の牛舎の間に、鉄骨の足場を組みブルーシートで覆った「隔壁」を設置。各牛舎を消毒液を染み込ませた目の粗い薄布で覆い、職員の家族の行動も規制した。だが、種雄牛の避難にまでは至らなかった。

 県畜産課の岩崎充祐家畜防疫対策監は「農家に消毒徹底を言っている手前、早々に生きた家畜を移動することには抵抗があった」と振り返る。

 しかし、感染エリアが拡大し、同事業団に接近。豚にも感染が及んだことで、県は4月末、特例による種雄牛の移動を決意し、水面下で農林水産省に打診した。

■    ■

 移動制限は消毒と並ぶ防疫の根幹。農家に移動を制限している手前、国は当初、県の要求を拒否する姿勢を貫いていた。ある県幹部は「農水省高官の自宅にまで電話したが、交渉の机にすら着いてもらえなかった」と明かす。

 話し合いが動き始めたのは5月8日。その2日後、赤松広隆農相(当時)は「清浄性の確認、避難先での万全の管理、畜産農家の同意」を条件に特例を認める意向を示した。特例が認められたのは、県内一円に供給される人工授精用精液ストローの9割を占めるエース級6頭。

 米軍普天間飛行場移設問題や口蹄疫への対応遅れで逆風にさらされていた民主党の政治判断なのか。農水省は「県と協議し、防疫上問題がなかったので認めただけ。詳しくは(第三者による国の)検証委員会が調べている」と述べるにとどまる。

■    ■

 県は5月12日、遺伝子検査で6頭の陰性を確認すると、13日、トラック2台に分乗させ西米良村の農場に向け出発した。

 しかし、その農場から半径5キロに3戸の畜産農家があることが判明し、移動しながら新たな避難先を探す事態に。あるJA幹部は「4月末から特例を求めていたなら場所を入念に調べておく時間はあったはず」と準備不足を指摘。宮崎大農学部の後藤義孝教授(家畜微生物学)は「移動が制限されるリスクは当然分かっていた。事前の分散飼育などが必要だった」と話す。

 結局、6頭がたどり着いたのは西都市尾八重の標高800メートルの山中にある急ごしらえの牛舎。ある和牛肥育農家は「もっと早く移動が決まっていれば、感染疑いで殺処分された忠富士も、残る49頭も助かった」と、判断の遅れが招いた損失を嘆く。

×    ×

 防疫とブランド維持の優先順位、一般農家との公平性、県有と民有の整合性―。第3部では、口蹄疫で揺れる本県にさらなる混乱を招いた種雄牛問題について考える。


【連載企画】検証口蹄疫・第3部(2)
(2010年9月28日付)

最初の特例(下)/ブランド優先に賛否

 県幹部も「特例中の特例」と認める県有種雄牛6頭の避難措置。必死の消毒作業を続けていた農家や、県内外の畜産関係者は複雑な思いで事態の推移を見守った。

 県家畜改良事業団のある高鍋町に避難の一報が入ったのは6頭の出発直前。同町産業振興課の長町信幸課長は「公平な対応を取らないと大変な事態になりかねない」と県幹部に懸念を伝えた。ほかの農家が特例を求める可能性に加え、民間種雄牛を飼育する町内農家の存在も頭の片隅にあったからだ。

 種雄牛問題と一定の距離を置いたJAグループ。JA宮崎中央会の見戸康人常務は「何とかならないかという気持ちの半面、全国から見てどうなのかということを考えると引っかかる部分もあった」と、他県への配慮があったことを明かす。

 一方、隣県には衝撃が走った。鹿児島県畜産課の北野良夫課長は「高い牛だろうが安い牛だろうがウイルスを媒介する可能性は同じ。家畜伝染病予防法の下では家畜はみな平等だ」と今も問題視する。

■    ■

 「種雄牛だけは守らんと築き上げてきた宮崎の畜産が終わってしまう」「(種雄牛が残っていれば)経営再開にも期待が持てる」。県内の和牛農家には避難に肯定的な声が多かったのも事実だ。

 ただ、突然の種雄牛避難は当時、埋却地や資材の不足で混乱を極めていた殺処分現場に少なからず動揺を与えた。

 「自分(県)の牛は逃がして、うちの牛は殺すのか」。納得できない農家に、返す言葉もなく頭を下げたある県職員は「(種雄牛の)特例はブランド維持と防疫を天びんに掛けたのと同義。現場に不要の混乱を招いた」と苦々しい表情で振り返った。

■    ■

 6頭が西都市尾八重の仮設牛舎にようやく到着した14日午後、同事業団の肥育牛に口蹄疫のような症状が見つかり、同日中に感染疑いが確認された。

 この「紙一重」の避難劇は疑念、憶測を呼んだが、県畜産課の岩崎充祐家畜防疫対策監は「当然(疑われると)思ったが、そこまでして守ることはない」と否定する。

 ただ、みやざき養豚生産者協議会会長で獣医師資格を持つ日高省三さん(55)=宮崎市=は「そもそも防疫に特例はない。県は危機管理の責任を負う自覚に欠けていた」と、防疫体制に穴を開けてまで和牛の生産基盤維持を選択した県の対応を非難する。

 国の口蹄疫対策検証委員会の中間報告は「(防疫上)問題だったのではないか」とした上で「(今後は)特例を一切認めず、リスク分散を考えるべき」と提言している。

 県農政水産部の高島俊一部長は、賛否を呼んだ特例について「批判も重々承知しているが、種雄牛がいなくなれば本県畜産の再生はない。時を経て判断は正しかったと評価されるはずだ」と強い信念をのぞかせる。


【連載企画】検証口蹄疫・第3部(3)
(2010年9月29日付)

特例と防疫/処分拒否の火種残る

 県は西都市尾八重に避難させた種雄牛6頭のうち「忠富士」に感染疑いが確認された後も、残り5頭の救済を求め経過観察という2度目の特例を国から取り付けた。しかし、専門家は防疫上の問題を強く指摘する。

 潜伏期間(7?10日間)を考えると、忠富士は避難前に感染した可能性が高い。5頭の中には忠富士と同じトラックで運ばれ、「なめ合っていた牛もいる」(事業団職員)という。急ごしらえの牛舎内は1頭ずつ入る牛房の間に仕切り板があったが、天井付近に空間があるなど完全に遮断された状態ではなかった。

 宮崎大農学部の後藤義孝教授(獣医微生物学)は「感染しなかったのは奇跡。牛農家にとっては良かったかもしれないが、5頭を特例で残したことは防疫の観点からはあり得ない」と述べる。

■    ■

 一方、6頭が後にした県家畜改良事業団では5月14日、肥育牛に感染疑いが見つかった。県は事前に、肥育牛と種雄牛の牛舎の間を約150メートルにわたり鉄骨とブルーシートで仕切り、管理者も分離。それぞれは別農場という認識の下、種雄牛49頭の殺処分回避は可能と考えていた。

 しかし、国は「敷地が同じである以上は同一農場」との見解を示し、49頭の殺処分が決定した。見解の溝が生じたことについて、県は「国とは事前のすり合わせをしていなかった」と明かす。

 同事業団の関係者は「別農場を認めさせるのは難しいと分かっていたが、わずかの望みを持って主張した。今考えると『あがき』だったかもしれない」と吐露する。

■    ■

 種雄牛をめぐる県の一連の動きに対し、川南町の50代養豚農家は「防疫に牛も豚もない」と苦々しく振り返る。同様の思いは、ほかの養豚農家にもあった。

 その背景には、牛と豚の経営の違いがある。和牛生産は、県が種雄牛を一元管理して宮崎ブランドをつくり上げてきた経緯があり、高品質という付加価値追求型の経営手法を取る。一方、養豚は生産性や効率性を重視する企業的経営、規模拡大が進展。牛に比べて疾病も多いことから防疫意識は高く、牛と豚とを「畜産農家」とひとくくりにはできない。

 6頭を避難させた最初の特例は畜産農家の同意を条件としたが、畜産農家の総意に基づく同意は得られていない。先の養豚農家は「報告は受けたが、同意はしていない。県は何を根拠に特例を実行に移したのか。万が一、感染が拡大した場合、責任はどこが取るつもりだったのか」と憤りを隠さない。

 後藤教授は「今後、2度目の特例を基に農家が検査を求め、陰性が確認されれば殺処分に応じないこともあり得る」と、特例が将来の火種として残ったことを憂う。

 実際、2度の特例がその後に民間種雄牛の救済論争を生むことになる。

【連載企画】検証口蹄疫・第3部(4) (2010年9月30日付)

効率性を優先し代償/集中管理

 「まるで猛獣だ」。大きく引き締まった体。首だけで乗用車を持ち上げるほどの力。本県「畜産界の宝」といわれる種雄牛を集中管理する県家畜改良事業団(高鍋町)の川田洋一常務理事は、種雄牛をそう表現する。

 危険なため、種雄牛の世話は必ず2人以上の職員で当たる。加えて、精液の採取や冷凍保存などの業務は、相当な訓練と設備が必要という。川田常務理事は「人件費、設備費などの費用対効果を考えると、管理を1カ所に集中させることが常識だった」と集中管理の背景を語る。

 今回の口蹄疫により、その管理体制は負の側面を露呈した。国の防疫指針では、1頭でも感染疑いが確認されれば、農場内の全家畜が殺処分される。種雄牛を避難させる特例が認められなければ、生き延びた5頭を含む55頭が全滅する恐れもあった。

 「種雄牛の管理を2カ所以上に分散しておく必要があった」と指摘する専門家もいる。しかし、川田常務理事は「発生前にその発想はなかった」と効率性を優先した代償をかみしめた。

■    ■

 鹿児島県では県に加え、民間の種雄牛改良が活発で、結果的にリスク分散につながっている。

 民間は、曽於、姶良市など県内各地で種雄牛を飼育。同県農政部の有村裕之参事は「防疫のためではないが、種雄牛が一気に全滅の危機に陥る可能性は低い」と認める。

 だが、弊害もある。有村参事は人工授精用精液ストローの県外販売に触れ、「民間は商売優先。県外で需要が増えると、県内の希望農家に精液が行き渡らない」と話す。民間業者はストローの7割を県内向けとする申し合わせを内部で行っているが、県外の方が値が付くため、なし崩しになっているのが現状だ。

 一方、本県は、集中管理によりブランド構築を成功させた。県農政水産部の高島俊一部長は「これからも種雄牛の管理は県が担っていく」との姿勢を崩さない。

■    ■

 宮崎日日新聞社は今月中旬、全国の都道府県(本県を除く)にアンケート調査を実施。種雄牛を集中管理する兵庫県が管理施設を2カ所に分けるなど、半数近くが種雄牛や種豚など種畜の管理体制を見直すと回答した。

 本県では現在、種雄牛5頭を西都市の仮設牛舎と高原町の同事業団・産肉能力検定所の2カ所で管理。今後、本格的な分散管理を検討する。

 県畜産課の児玉州男課長は「分散管理を行うにはコストの増加が避けられない。実現のために、事業団の運営努力に加え、県民に理解を求めていきたい」と述べる。

 口蹄疫により本県は50頭の種雄牛を失い、今後、一定の頭数まで回復させることになるが、分散管理や防疫強化には相応のコストを要する。効率性と安全性の両立が難しい分野であり、県民、農家への丁寧な説明が求められる。

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