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2010/10/11

口蹄疫・宮崎日日新聞【検証口蹄疫】 第3部(5)~(7)

【連載企画】検証口蹄疫・第3部(5) (2010年10月2日付)

「民間」救済(上)/防疫のスタンス一転

 「農家が再興する時に必要になる」。県内では民間で唯一、種雄牛を育てていた高鍋町の薦田長久さん(72)は殺処分を前提としたワクチン接種を2カ月近く拒み続けた。殺処分を勧告しながら、救済を訴えた東国原知事は山田正彦農相(当時)と激しく対立。科学的知見に基づくべき口蹄疫防疫が次第に“政治ショー”の色合いを帯びていった。

 「うちの種牛も避難させてほしい」。県がエース級種雄牛6頭を県家畜改良事業団(高鍋町)から移動させた5月中旬、薦田さんは県と国に要望、嘆願を繰り返したが、同月下旬、ワクチン接種の要請を受けた。

 別農場で飼育する肥育牛への接種は承諾したが、種雄牛だけは拒み続けた薦田さんは「優れた種雄牛は何万頭もの子牛を一度に改良できる。自分の牛も何とかして残せないかとの思いだった」と語る。

 しかし、県は「公費を投入してきた事業団の種雄牛とは事情が違う」と拒否。交渉は暗礁に乗り上げた。6月29日、知事は口蹄疫対策特別措置法に基づき殺処分を勧告。薦田さんは代理人を付け、法的対抗措置の検討に入った。

■    ■

 「法の下に一刀両断できない」「遺伝資源は何とか残す方向で」。知事は勧告期限が切れた後の7月8日、特例救済を求める方針を打ち出した。知事と直接交渉していた薦田さんが種雄牛の無償提供を申し出たためだ。県農政水産部の幹部は「救済方針を決断したのは知事」と明かす。

 殺処分勧告から一転、救済に動いた知事の行動について知事に近い人物は「良くも悪くも情の人」と語り、知事が薦田さんと面会したことで心境に変化が生じたとみる。また事業団関係者は「一刻も早い清浄化のための政治判断ではないか。裁判になったら1、2年かかる」と分析する。

 知事の救済方針により県農政水産部の民間種雄牛に対するスタンスも一転。方針前は民間種雄牛の能力に冷ややかな見方が支配的だったが、方針後は「血統を見ると期待は持てた」「県の種雄牛は5頭しかいないので、数は多いほどいい」と持ち上げた。

■    ■

 「種牛を残すか残さないかということを知事に判断を仰ぐ行政でいいのか。トップが出なければ、県と国とのいざこざもなかったのではないか」。JA宮崎中央会の羽田正治会長は一連の県対応に苦言を呈する。県庁内部からも「この件は本来、(事務方で)粛々と処分するべきだった」との批判が聞かれる。

 薦田さんは「県の幹部とは信頼関係を築けなかった。何とか知事と話す機会を待っていたし、懸命に守ってもらおうとした」と吐露する。最終的に薦田さんが知事の思いに応える形で国の方針を受け入れたが、知事の考え一つで防疫方針が一転する危うさを露呈し、知事の言動に右往左往した事務方は課題解決能力に疑問符を残す結末となった。


【連載企画】検証口蹄疫・第3部(6)
(2010年10月3日付)

「民間」救済(下)/種畜の基準なく摩擦

 今回の口蹄疫で種雄牛をめぐる官と民の摩擦が起きたのは本県だけではない。人工授精用精液ストローの民間シェアが高い鹿児島県では感染多発期の5月20日、県の種雄牛だけ離島に避難させる方針を打ち出した。民間の種雄牛業者でつくる同県種雄牛協会(古城光雄会長)は、民間業者にも配慮を求める要望書を県に提出したが、県からの支援は受けられなかった。

 古城会長は「民間種雄牛は県内の畜産農家の財産と同じ。県の種雄牛だけ優先的に避難させるのはおかしい」と憤る。結局、県の支援は受けられず、種雄牛を所有する14会員のうち、4会員が自費で離島などに避難させた。

■    ■

 古城会長は本県で民間種雄牛が救済されなかった判断に対し「検査で感染が確認されたのなら納得できるが、検査もされず、県の種雄牛だけ救済が認められたのは不公平」と否定的だ。今後、口蹄疫発生時の民間種雄牛の扱いを国と協議していく構えだ。

 和牛の育種や改良に取り組む全国和牛登録協会の向井文雄会長の見解は異なる。「公費が投じられた県民の共有財産である限り、平等、不平等の観点から論じるものではない」として、国や県が検討を重ねた上での特例判断には、従うべきだと考える。

 ただ、家畜改良の専門家の中には、特例の是非を「画一的に判断することは困難」と指摘する声がある。それは種雄牛や種豚といった種畜に対するルールが国内でも、世界的にも未整備なためだ。

■    ■

 民間の種雄牛業者が殺処分を拒んでいた7月中旬、山田正彦農相(当時)ら国側は「このままでは清浄国に復帰できない」と国際獣疫事務局(OIE)による清浄国認定を重視する姿勢を取り続けた。

 しかし、帝京科学大生命環境学部の村上洋介教授(動物ウイルス学)は「種畜や動物園などの展示動物、研究用動物などの扱いについて、OIEでもきちんとした整理はされていない」と説明する。

 「世界基準」がないことで畜産界だけでなく動物園も戸惑った。宮崎市フェニックス自然動物園では13種、約140頭の偶蹄(ぐうてい)類を飼育。同市公園緑地課の鈴木俊郎主幹は「家畜へのワクチン接種が決定した際、国に確認したが、動物園の動物の扱いは決まっていなかった」と語る。結局はワクチン接種対象にならなかったが、今後どうすべきか不透明なままだ。

 国の口蹄疫対策検証委員を務める村上教授は「統一した科学的な方針を決めておかないと、混乱するに決まっている」と問題視。種畜大国の英国をはじめとするEU諸国を議論に巻き込むよう、日本が働き掛ける必要性を訴える。

 動物の国際取引の基準を決めるOIEすら想定していない種畜など希少動物の取り扱い。官民で判断が分かれた今回の種雄牛をめぐる混乱は必然的でもあった。


【連載企画】検証口蹄疫・第3部(7)
(2010年10月4日付)

知事と農相対立/背景に特措法の不備

 「勧告しておきながら殺処分しないのは違法」。山田正彦農相(当時)は、東国原知事が薦田長久さん(72)=高鍋町=の所有する種雄牛の救済方針を打ち出した際、激しく批判し、繰り返し県に殺処分を迫った。背景には国が殺処分に直接乗り出せない口蹄疫対策特別措置法(特措法)の不備があった。政治色の強い2人の対立は、国が地方自治法に基づき都道府県の役割を代行する初の代執行が検討される事態にまで発展した。

 口蹄疫対策のために急きょ制定、6月4日に施行された特措法は、国や県が強制的に家畜を殺処分することを可能にした。しかし、国が強制殺処分できるのは、農相が対象地域を直接指定した場合だけ。今回のように県知事の申請に基づいて地域を指定した場合は、国が直接関与できない仕組みだ。

 政府の現地対策本部長を務めた篠原孝農水副大臣は「国が直接乗り出す規定が骨抜きになっていた。突貫工事だから不備がある」と認めている。

■    ■

 県の手でしか強制できない殺処分だったが、知事は救済方針を崩さず、山田農相との対立は激化。山田農相に「危機意識が県に足りないのでは」と批判された知事が「頭が固い」と応酬するなど、泥沼化の様相を呈した。

 知事の一連の言動について県庁内では「目立つ材料、お涙ちょうだいになると踏んだのでは」と手厳しい見方も。騒動の直後に知事に会った、ある農業団体関係者は「薦田さんが心穏やかでないと思い、ああいう態度を取った」と、不本意な言動があったことをほのめかされたという。

 真意は別として、知事の行動が薦田さんに法的対抗措置を思いとどまらせ、事態の早期収拾につながったのは事実。代執行という国と県の全面対決は寸前で回避された。

■    ■

 篠原副大臣は2人の対立を収めるために、官邸でこの問題を引き取り、種雄牛を救済するよう仙谷由人官房長官に進言したが、官邸は静観。「法に従えば殺処分。それを情けで救うのが政治主導なのに、政治力が発揮されなかった」と悔やむ。

 一方で、10年前の口蹄疫対策を知る県幹部は特例や政治判断に否定的だ。「今回は政治家が口を出し過ぎて混乱した。本来、科学に政治家が口を出すべきではない。特措法など制度をつくるときはいいかもしれないが」

 県の検証委員会は「危機管理時の国や県の連携」に着目して重点的に検証作業を進め、防疫マニュアルに反映する方針。農林水産省は来年の通常国会に、国の権限強化を盛り込んだ家畜伝染病予防法の改正案を提出する意向だ。

 特措法の不備によって国が強制殺処分に手を出せず、知事と農相の政治的スタンスが衝突した種雄牛問題。再び政治判断が介入する必要のない法やマニュアルが求められている。 
=第3部おわり=

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