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2010/10/05

宮崎日日新聞【検証口蹄疫】 第2部(9)~(10)

【連載企画】検証口蹄疫・第2部(9)

(2010年8月29日付)

殺処分(上)/想定外の急増に混乱

 口蹄疫の発生が急増し始めた大型連休後半、殺処分の現場は重苦しい雰囲気に包まれていた。各町との連絡調整を担当した県職員は「1〜2時間寝て、現場に行く。それでも殺処分が(発生に)追い付かなくなった」と振り返る。

 殺処分の対象農場が急激に増えたことで、資材供給や輸送網など後方支援に混乱が生じた。獣医師が農場に着いているのに補助員が来ない。処分班が到着しているのに資材がない―。ある獣医師は「午前中を棒に振ったこともある。とにかく、段取りが悪かった」と歯がゆさをにじませた。

 物流の止まった大型連休、県は長靴や一輪車、ビニールシートなど資材調達をホームセンターの在庫に頼った。調達に奔走した別の県職員は「国も県も“災害”の被害想定すらしていないから、資材もすぐ底をつく。戦争でいう兵站(へいたん=後方支援、補給)が軽視されていた」と当時を思い起こす。

■    ■

 獣医師免許を持つ県職員(家畜防疫員)、薬殺などを担う獣医師、牛をつないだり豚を追い込んだりする補助員など、数人から数十人のチームが連日殺処分に当たった。ただ、家畜伝染病予防法で「扇の要」に位置づけられる家畜防疫員は、県の現地対策本部との連絡調整や処分頭数の集計に追われ、司令塔の役割を十分に果たせなかった。

 国の家畜衛生統計(2007年)によると、家畜保健衛生所(家保)に勤務する本県の家畜防疫員は46人。同じ畜産県の鹿児島県(75人)に遠く及ばない。家保獣医師1人当たりの家畜の管理頭数1万1430頭は全国最多だ。県畜産課の三浦博幸副主幹は「発生が散発なら家保で対応できたがこれだけの規模は…」と、県単独での防疫の限界を口にする。

 ただ、非常時に備え、家畜防疫員の確保を工夫する自治体もある。秋田県は20年以上前から、県OBや農業共済組合(農済)の臨床獣医師45人を「民間家畜防疫員」に委嘱。岩手県も開業獣医師や農済の獣医師80人を「地区家畜防疫員」に任命している。

■    ■

 殺処分の現場は県や町、JAの職員、県外獣医師などさまざまな人であふれ、作業の進め方で意見の衝突も頻繁に起きた。獣医師、補助員の技術にも格差が目立った。

 5月上旬から約2カ月間、殺処分に携わった高鍋町の開業獣医師志賀明さん(57)は「家保獣医師にも牛や豚、それぞれ専門があり、能力にも限界がある。最初から事情に精通した地元や農済の獣医師を活用する仕組みがあれば」と悔やむ。

 宮崎大農学部の後藤義孝教授(獣医微生物学)は「にわかづくりのチームをどう動かすかという新たな課題が出てきた。リーダーの獣医師を中心に連携を図り、一つの感染症に柔軟に対応できるシステムや態勢づくりが絶対に必要だ」と提起する。


【連載企画】検証口蹄疫・第2部(10)
(2010年8月30日付)

殺処分(下)/ウイルス対策不十分

 口蹄疫の発生農場はウイルスが高い濃度で潜む。県が2003年に策定した口蹄疫防疫マニュアルにはウイルスを殺処分、埋却現場に封じる「持ち出し対策」も示されているが、徹底できていなかったという反省が残る。

 マニュアルには「農場出入り口付近にシャワー設置」と明記されているが、未設置のため顔や手足しか洗えない現場もあった。「水の確保や汚水処理など問題があった」と県担当者。多発時には10以上の農場で殺処分が同時進行し次々と現場が移動する中、実行は厳しかったと明かす。

 数多くの現場に立ち会った高鍋町の30代女性獣医師は、川南町役場に置かれた県の現地対策本部にすら、当初はシャワーがなく、ウイルスを持ち帰る可能性があったことに強い危機感を抱いていた。「農場内にシャワーがあれば浴びて出ていたが、本部になかったのはおかしい。設置されたのは5月の中旬だった」と問題視する。

■    ■

 防護服、マスク、手袋…。現場に持ち込んだ物品は現場で廃棄され、やむを得ず持ち出す場合は消毒を条件にしている。しかし現場は獣医師以外にも建設業者、行政職員ら雑多な人員が入り乱れ、最大で700人が動いていた。宮崎大農学部の末吉益雄准教授(獣医衛生学)は廃棄、消毒といった防疫の大原則が徹底されていたか、いぶかる。

 末吉准教授は実際にたばこや携帯電話を持ち込んでいた作業員を目撃。「捨てられる物はいいが、(消毒剤に弱い)携帯電話は問題。電話を肌身から離したくない人の対策が課題」とする。

 国の疫学調査チームの一員でもある末吉准教授は現場からウイルスが持ち出された可能性について「教訓として生かさなければならないが、どれだけ拡大させたか検証は難しい」と語る。膨大な作業員の動きはもう追跡不可能だ。

■    ■

 マニュアルの履行や、その実効性が問われた殺処分の現場だが、柔軟な発想で課題を克服した例もある。川南町の大規模養豚場では、処分した豚を豚舎から運び出す作業が課題となり、選果場で使うローラーのレール台を活用。豚を台に載せて滑らせるように運んだ結果、数人で抱えて運ぶ通常の搬出法よりも大幅に効率化できた。また、別の養豚場では電気ショックによる殺処分に、家畜の扱いに慣れた食肉処理場の職員を投入。獣医師の不足を補った。

 規模や畜種、畜舎の構造などが異なる292の発生農場は、それぞれに課題や教訓を残した。県対策検証委員会の原田隆典座長(宮崎大工学部教授)は「それぞれの立場の人が『こうしておけば』と反省を持っている。早く全体像をつかみ、何が重要だったか見極めたい」と話す。

 膨大な情報をどう整理し、課題を抽出するか。実効性を備えた新たなマニュアルの策定へ委員会は重責を担っている。 (第2部おわり)


間が開いてしまいました。
関連

宮崎日日新聞【検証口蹄疫】第2部(1)~(4)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2010/08/post-b935.html

宮崎日日新聞【検証口蹄疫】第2部(5)~(8)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2010/08/post-3187.html

宮崎日日新聞【検証口蹄疫】第1部(1)~(3)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2010/08/post-5d26.html

宮崎日日新聞【検証口蹄疫】第1部(4)~(7)
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2010/08/post-e3ef.html

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