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2010/08/30

口蹄疫・宮日連載企画 検証口蹄疫・第2部(5)~(8)

【連載企画】検証口蹄疫・第2部(5)
(2010年8月24日付)

豚での発生/現場の危機感届かず

 「試験場の豚? そんなはずがない」。4月27日早朝、JA尾鈴養豚部会長の遠藤威宣さん(56)は知人からの電話に思わず耳を疑った。

 国内で初めて豚が感染した県畜産試験場川南支場は、川南町北部の20ヘクタールに、45億円を投じて整備された全国屈指の施設。正門から豚飼育エリアまでには2カ所の車両消毒ゲートがあり、豚舎は逆性せっけんのシャワーが朝夕に自動噴霧されるなど万全の防疫設備を備える。しかも、発生が当時集中していた町西部の山本地区から東に3キロ以上離れている。それだけに遠藤さんは信じられなかった。

 畜産の要衝陥落―。その衝撃は大きく、「従業員が別の農場に出入りしていた」「裏門から自由に入れた」などのうわさが飛び交ったが、黒木政博支場長は「そのような事実は一切ない」と否定する。

 同支場では職員が出入りする際、作業着や長靴を交換する一方で、4月20日までは畜産関係施設への訪問後を除き、入り口付近のシャワー施設で体を消毒していなかった。町内の30代養豚農家は「なぜ試験場ですら感染したのか。感染経路を徹底検証し、明らかにしなければ農家は安心できない」と強く求める。

    ■    ■

 ウイルス排出量が牛の千倍ともされる豚への感染。人の動きが活発化するゴールデンウイークを数日後に控え、事態悪化を予見し、防疫方針の転換を訴える声も出始めた。

 高鍋町の開業獣医師志賀明さん(57)は、1997年に台湾で豚数百万頭が殺処分された事例も踏まえ、4月30日、農林水産省に電話を入れ、感染拡大を食い止めるため、発生地に近い農場から家畜をなくす予防的殺処分の早期実施などを訴えた。

 しかし、返ってきたのは「感染が爆発的に増えたら考える。まだ制限区域内でのこと」という答えだった。

 同支場での発生から1週間後を境に、危機は誰の目にも明らかになっていた。5月4〜7日のわずか4日間で、感染疑いは5万頭以上。殺処分は“順番待ち”の状態に陥った。

    ■    ■

 「緩衝帯をつくる。ワクチンに同意してくれんか」。遠藤さんは5月6〜8日、同町南部から高鍋町北部の大規模養豚場15戸に自らの豚の予防的殺処分を意味するワクチン接種を求めた。同意を得ると、宮崎市の養豚農家を通じて、10日に来県した赤松広隆農相(当時)にワクチン使用の検討を要請。しかし、国がその悲壮な覚悟に応えることはなかった。

 感染の南下を止められないまま、同意書に署名した大規模養豚場の多くが5月中旬以降、相次いで感染。その後も農家や獣医師といった豚を知り尽くしたプロたちが抱いていた懸念は、次々と現実のものとなっていった。

 「現場の声は全く届かなかった」。遠藤さんの声はむなしさに包まれていた。

【連載企画】検証口蹄疫・第2部(6)
(2010年8月25日)

野生動物と防疫/未解明多く課題残る

 「イノシシが死んでいる。口蹄疫ではないのか」。感染が拡大していたころ、県畜産課には多くの問い合わせが寄せられた。口蹄疫はシカやイノシシなど野生の偶蹄(ぐうてい)類も感染するとされ、多くの農家が不安を抱いた。人里を自在に行き来する鳥獣への対策は、終息後も防疫上の課題として残った。

 県自然環境課によると、県内にシカは約7万7千頭(2008年度調査)が生息。イノシシの数は把握していないが、人里など分布域は確実に広がっているという。

 県は死体や衰弱状態で見つかった野生動物について口蹄疫感染の有無を検査。生きた状態か、死亡直後でないと検体採取は困難だが、これまでにイノシシ7頭、シカ4頭、カモシカ2頭の検体を動物衛生研究所(動衛研、東京)に送付。すべて陰性だった。

 県猟友会の米良安昭会長は「いずれも自然死や転落死。野生動物は警戒心が強く、人工物、特に畜舎の中に入り込むことは考えにくい」と、これらの動物がウイルスを媒介した可能性には懐疑的だ。

■    ■

 感染ルートを調べている国の疫学調査チームは、近隣農場への伝播(でんぱ)はネズミやハエのほか、野鳥による可能性があると推測する。

 JA尾鈴は4月20日の1例目発生後すぐ、現場周辺の農家に防鳥ネットを配布。家畜のだ液が付着した餌をスズメやハトがついばむためだ。松浦寿勝畜産部長は「人やモノ、車の動き以外に、野鳥対策で感染は防げると考えていた。それなりに効果はあったと思う」と当時を振り返る。

 埋却地や堆肥(たいひ)舎に大量発生したハエも農家を不安に陥れたが、殺虫剤配布を除き目立った対策は講じられなかった。動衛研によると「野鳥や昆虫に付着して機械的にウイルスを運ぶ可能性はあるが、感染を起こすほどのウイルス量を伝播するかは不明」という。

■    ■

 帝京科学大生命環境学部の村上洋介教授(動物ウイルス学)は「野生動物の口蹄疫ウイルスに対する感受性(感染必要量、排出量など)は詳しく分かっていない」と話す。ただ、いずれも大発生した1997年の台湾、2000年の韓国、01年英国でも「野生動物への感染報告はない」とし、必要以上の不安を抱かないよう訴える。

 農場のバイオセキュリティー(疾病侵入対策)の向上を提言するのは、宮崎大農学部の末吉益雄准教授(獣医衛生学)。「シカは牛にヨーネ病、イノシシは豚に豚コレラやオーエスキー病を媒介する」と、口蹄疫以外にも警戒すべき伝染病を挙げる。

 村上教授も野生動物を飼料から遠ざけ、農場周辺の消毒を徹底するよう求め、「野生動物の生態に詳しい専門家が対策に参画し、行動様式を知ることが必要」と指摘する。

 野生動物対策は伝染病に強い畜産地帯づくりへ喫緊の課題とも言える。

【連載企画】検証口蹄疫・第2部(7
(2010年8月26日)

埋却地(上)/資格水染み出し選定困難

 国の疫学調査チームは、口蹄疫の感染が拡大した理由の一つに、殺処分と埋却の遅れを挙げる。

 宮崎日日新聞社の調べでは、発生農場の牛と豚の殺処分に要した日数は感染疑いの確認から平均9・6日。国が6月24日に示した防疫措置実施マニュアルが求める「原則24時間以内」には程遠い。遅延の最大の原因は、埋却地の確保が難航したことだった。

 難航した要因の一つは地下水。爆発的に感染が広がった川南町では、4月下旬には問題が表面化していた。埋却予定地を掘削すると、地下水が染み出し、用地の再選定を迫られることもしばしばで、作業効率の悪化を招いた。

 県畜産課の水野和幸副主幹は「児湯地域は地下水に恵まれたため、畜産が栄えたという側面もある」と語る。

   ■     ■

 鹿児島大総合研究博物館の館長を務める大木公彦教授(地質学)も「児湯地域は、地下水が豊富」と認める。宮崎市から都農町に至る丘陵の表面をつくる地層は、主に砂や岩石の破片でできており、水を通しやすい。その下には泥を含む水を通しにくい地層が分布。この地層は北東の方角に傾いており、九州山地に降った雨は地下水となり児湯地域に向かって流れるという。大木教授は「児湯地域は(埋却条件の)4メートル程度の深さまで掘ると、水が染み出る土地が多い可能性がある」と指摘する。

 潜在的な地下水問題を抱える児湯地域において、家畜伝染病予防法などで定める(1)発生農家が埋却地を確保する(2)埋却地は原則として発生地やその付近に限る―の規定は理想論に近い。県が2003年に作成した県口蹄疫防疫マニュアルにも、こうした地域の実情は反映されていない。

 地質的な問題点に対する国や県の準備不足が農家を追い詰める結果となり、新富町の発生農家は「農場付近の土地を4カ所ほど掘ったが、すべて水が出た。埋却地が見つかるまで9日かかり、いら立ちや焦りの毎日だった」。

   ■     ■

 発生市町村の中で、殺処分まで最長の平均11・4日を要した高鍋町。地下水に加え、県内市町村で最も面積が狭いことも足かせとなった。同町産業振興課の長町信幸課長は「大規模農場での発生が相次ぎ、埋却地確保が追い付かなかった」と振り返る。

 埋却地問題の見通しが立ったのは、町が広大な埋却用地を確保した6月5日。大規模農場を中心に、発生農場の約3割がその土地を利用した。その間、埋却地が見つからず、発生から3週間も牛を飼育し続けた農場もあった。

 長町課長は、山田正彦農相が畜産農家に対する埋却地確保の義務化を示唆していることに触れ、「北海道ならともかく、十分な土地がない高鍋町では難しい。画一的な政策ではなく『過密地帯では焼却処分施設を整える』などの地域の現状に合わせた対策を考えるべき」と訴える。

【連載企画】検証口蹄疫・第2部(8)
(2010年8月27日付)

埋却地(下)/周辺住民同意に難色

 口蹄疫の感染疑いにより約1500頭の牛を殺処分された高鍋町の長谷部康夫さん(60)は、迅速な家畜の殺処分・埋却という初動防疫の重要性を感じていた一人。発生直後には「よそに感染させない」と、所有する牧草畑を埋却地にする準備を整えた。

 しかし、畑周辺の住民が「埋却後の悪臭が気になる」と反対。町職員を交えた交渉も難航し、ウイルスがまん延する畜舎で1カ月近くも牛を飼育し続けることになった。

 同町産業振興課の長町信幸課長は「町内で口蹄疫が発生したのは、都農町の1例目の約1カ月後。悪臭などの風評が広がり、近所に家畜を埋めることに難色を示す町民が多かった」と内情を明かす。

   ■     ■

 同様の問題は川南、都農町などでも発生。解決の糸口として関係者が期待を寄せたのは、5月28日に成立し、「国が殺処分した牛、豚の埋却に必要な土地を確保する」とした口蹄疫対策特別措置法。長町課長は「国が(埋却地を)買って準備してくれると思った」と振り返る。

 しかし、国が提供した埋却地は、川南町にある国有の防潮林など。傾斜が急だったり、掘削したら岩石が出てきたりして、ほとんど利用できなかったという。

 追い打ちを掛けるように、山田正彦農相は「周辺住民の同意はいらない」と強制埋却を指示。長町課長は「農家も周辺の住民も、ずっとその土地で暮らしていく。強制的に埋却を行って、被害者、加害者の関係をつくることはとてもできない」とその場しのぎの対策を批判する。

   ■     ■

 都農町は感染が集中した児湯地域の中では最も短い期間で殺処分を行った。宮崎日日新聞社の調べでは、感染疑い確認から殺処分までの県内平均が9・4日だったのに対し、都農町は3・4日。複数農場の家畜を同じ場所に埋める「共同埋却」の推進が、迅速な殺処分を可能にした。

 同町は5月中旬から、埋却地を確保できた農家に対し、共同埋却を提案。理解が得られた場合、その埋却地周辺の発生農場に家畜を一緒に埋却するよう働き掛け、埋却地を最大限に活用した。

 国の防疫指針は、原則として埋却地は発生地かその付近とし、感染・感染疑いの家畜の移動を制限している。しかし、共同埋却では埋却地が発生農場付近とは限らず、家畜の移動も避けられなかった。

 同町は宮崎家畜保健衛生所の指導、協力を得て共同埋却と家畜の移動を実現した。移動ルート沿いの畜産農家すべてに許可をもらい、散水車で消毒しながら家畜を運搬。移動によるウイルス拡散に細心の注意を払った。

 同町産業振興課の河野勝美課長補佐は「指針も家伝法(家畜伝染病予防法)も最終目標は防疫。マニュアル通りに動いていてはだめだ」と語り、柔軟な対応が県北への大規模な感染拡大を防いだという自負をのぞかせた。

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